大日本印刷(DNP)は、太陽電池モジュールの変換効率向上に寄与する部材3種類の量産を開始すると発表した。

今回、量産を開始するのは、封止材とバックシート、バスラインシートの3種類。封止材「CVF」シリーズは、現在、欧州の太陽光発電所などで問題となっている高電圧下の絶縁不良から「漏れ電流」が発生するPID(Potential Induced Degradation:電位誘発劣化)現象による出力低下に対応させた製品。この原因の1つとして、高電圧・高温度・高湿度などの厳しい条件下で、封止材の水分透過が増えることが考えられており、「CVF」シリーズはポリオレフィンを用い、EVA(エチレンビニルアセテート)を使用した製品と比較して水分遮断性を約10倍まで高めた。これにより、高温度・高湿度で1000Vの電圧をかけたPIDが起こりやすい条件下でも、出力低下がほとんどなくなったという。ポリオレフィンは、EVAよりも短時間でラミネートできるので生産性を向上しながらも、PID現象が起こらない太陽電池が生産できる。さらに、EVAは短波長(300nm前後)のUVが当たると分解されて黄変や酸性ガスを発生することがあるが、「CVF」シリーズではこの現象が起きにくく、幅広い波長域の光の透過性に優れているため、UV域の波長も発電に利用することが可能で、太陽光を有効活用する新たな高効率セルに使用して発電効率を向上させることができるという。

一方、太陽電池モジュールは効率の向上に伴って高電圧化しており、バックシートにも高い絶縁性が求められている。そこで、バックシート「NR」シリーズは、従来の数倍に絶縁性を高めた。m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル)を用いており、絶縁性だけでなく難燃性も高く、高温度・高湿度下の長期信頼性評価で、従来の10倍以上の耐久性を有している。また、2012年2月に太陽電池モジュールの信頼性保証体制に関するJIS Q8901が制定されるなど、長期間の製品保証ニーズが高まっており、この動きにいち早く対応させた長期信頼性タイプの製品となっている。量産は今秋より開始する。

そしてバスラインシートは、裏面電極型結晶太陽電池向けの製品。裏面電極型結晶太陽電池は、太陽電池セルの表裏両面にあった集電用の電極を裏面に集約し、表面の電極をなくして受光面積を増やすことで発電効率を高めることができる。しかし、セル裏面にプラス・マイナスの電極を形成する必要があり、太陽電池モジュールの生産工程が複雑であることが課題となっていた。バスラインシートは、この課題の解決に向けた製品で、電極の回路パターンをシート上に形成したもの。太陽電池モジュールを製造するラミネート工程で、セルに貼り合わせるだけで電極が形成できるため生産工程の簡易化が実現する。また、MWT(Metal Wrap-Through)とIBC(Interdigitated Back Contact)という裏面電極セルの両方式に対応している。バスラインシートは、2010年12月に生産を開始し、生産性と品質の確認を行ってきた。今回、生産体制を整え量産を開始する。

同社では、国内外の太陽電池モジュールメーカーに、今回量産を開始する製品を拡販していく。今後も、光の反射効率を高めて発電効率を向上するバックシートや封止材など、太陽電池モジュールの変換効率向上に寄与できる部材を充実していく考え。これらにより、2014年度には200億円の売上を見込んでいるという。

裏面電極用バスラインシート