動いている物体の表面や衝突の瞬間の物体の変形などをカメラで撮影し、高速・高精度・高密度に計測する技術を、産業技術総合研究所サービスロボティクス研究グループの佐川立昌研究員や鹿児島大学大学院理工学研究科の川崎洋教授、広島市立大学大学院情報科学研究科の古川亮・准教授らの研究チームが開発した。

この技術は、対象とする物体に、縦・横の波線からなる格子パターンをプロジェクターなどの光源から投影し、カメラで撮影する。物体表面に投影された波線の交点を瞬時に解析することで3次元表面形状を計測し、画像として再現する。

1枚の撮影画像だけでも表面形状を得ることができるが、投影する格子パターンの間隔を5-10ミリメートルほどに細かくし、毎秒2,000コマの高速度カメラで撮影することで、高速に運動・変形する物体の表面形状の測定ができる。従来は運動する人を計測する場合は、関節など数十点の位置しか目印にできなかったが、新技術では瞬間的に数万点の位置を計測できるため実測値との誤差も1-2ミリメートルと小さく、バットで打ったときのボールの変形や、衣服のしわ、手指の細かな動きなども高精度に計測できるという。

実際にこの技術を使い、肌着の上から胸部を毎秒100コマの速度で撮影したところ、胸の動きから心拍数や周期などの心拍波形も抽出できた。こうした、心電図に代わる非接触心拍計測としての医療分野への応用のほか、高速・精密な画像認識技術、スポーツ、材料解析など、さまざまな分野への応用が期待される。

新技術の詳細は8月6-8日に福岡市で開かれる「第15回画像の認識・理解シンポジウム(MIRU)」や、8月28-9月1日に米国サンディエゴで開かれる“The 34th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC2012)”で発表される。

今回の研究開発の一部は、総務省戦略的情報通信研究開発制度ICTイノベーション創出型研究開発「4次元メディアシステムの研究開発(2010-12年度)」と、内閣府の最先端・次世代研究開発支援プログラム「人体の内外表面形状すべてをリアルタイム計測するシステム-表情筋の動き計測から腸内壁の形状取得まで(2010-13年度)」の支援を受けた。

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