会見するルネサス エレクトロニクス代表取締役社長の赤尾泰氏

ルネサス エレクトロニクスは8月2日、2013年3月期第1四半期(2012年4~6月)の決算概要を発表した。売上高は前年同期比10.0%減となる1866億1200万円、営業損益は前年同期の190億9900万円の損失から176億300万円の損失に、経常損失も同202億6900万円の損失から176億900万円の損失に、純損益も同332億1800万円の損失から20億5700万円の損失へと、それぞれ赤字幅が縮小した。

同四半期の業績について同社は、国内経済が昨年の東日本大震災からの復興需要やエコカー補助金などの政策効果により、緩やかな回復基調をなったとする。一方、世界経済全体では東南アジア圏の新興国における需要の堅調な推移があったものの、欧州での債務問題に絡む個人消費の低迷、中国の前年度後半からの減速状態などの影響から停滞感が強い状態が継続した結果、自動車向け半導体で日経メーカーを中心に堅調な需要があったほか、携帯電話やパソコン向けの一部での需要増が見られたものの、世界的な電子機器・産業機器メーカーによる生産・部品調達の慎重姿勢から、回復が緩やかなものにとどまったとしている。

2013年3月期第1四半期業績の概要

半導体部門全体の売上高は、情報システムの統合の一時的な出荷停止などの影響もあり前年同期比で8.6%減の1682億円。営業損益は研究開発費の効率化や販売費および一般管理費の抑制などの費用削減施策の実行により、売り上げ減による利益の減少を補い、前四半期比で60億円改善となるも、最終的には176億円の赤字となった。

また、主要3事業の業績は、「マイコン事業」は自動車向けが増加したものの、産業機器向けや民生用電子機器向けが売り上げ減となり前年同期比2.3%減の754億円となった。また、「アナログ&パワー半導体事業(A&P)」の売り上げは、パソコンおよび液晶テレビ向けドライバICや民生用電子機器向けアナログIC、ディスクリートなどの売り上げが減少したことにより、同13.0%減の547億円。そして「SoC事業」は、民生用電子機器向けおよび携帯端末向けの売り上げ減の影響により、売上高は同17.7%減の344億円となった。

なお、同社では前年度の通期決算発表時に公開を控えていた今年度の通期業績予測および同第2四半期も併せて発表している。第2四半期の業績は、半導体の売上高の回復が見込まれるものの、前年同期比で約6.3%の減少となる見込みで、営業損益も前年同期比で37億円の改善にとどまり、売上高は8680億円、営業損失255億円を見込んでいるという。

一方の通期業績は、下期に半導体市場の緩やかな回復に伴う需要増や大型商談案件による売上増が見込まれることなどから、半導体事業の売上高が前期比で250億円増加することが見込まれ、その結果、売上高は上期が4060億円(半導体売上高は3770億円)、下期が4620億円(半導体売上高は4340億円)の合計で前年度比151億円減の8680億円(半導体売上高は同250億円同の8110億円)とする。

2013年3月期通期業績見込み

具体的には、マイコン事業では、自動車向けマイコンの堅調な推移に加え、市況回復に伴う汎用マイコンの売り上げ増が見込めることから、売上高は前四半期比で1桁%台半ばの増収を見込むとするほか、A&P事業では液晶向けドライバICの売り上げ増、SoC事業では民生機器向け大型商談案件による売り上げ増が見込まれることから、通期の売上高は2事業ともにほぼ横ばいを見込んでいるとしており、営業損益は778億円改善され、通期では210億円の黒字化を見込むとする。

また、経常利益は同712億円改善の100億円の黒字だが、純損失として1500億円を見込んでいる。この純損失は、上期に実施する早期退職優遇制度に伴う特別損失、下期における事業・生産構造対策にかかる特別損失など合計1550億円を計上する影響によるものとしている。

2013年3月期の各四半期の半導体売上高と通期営業損益の見通し

このほか、同社では収益基盤の強化に向けた取り組みを2010年4月の統合以降進めてきており、統合2年間で工場の売却や譲渡などを中心にして約20%の固定費削減を実現したとするも、東日本大震災や欧州や中国の市況悪化、国内の民生機器市場の変動、円高などの市況環境の変化への対応を図るために2012年7月に生産拠点の再編および人的合理化施策を発表しており、これをてこに、足元の売り上げを確実にする既存の自動車分野の商談獲得を進めるほか、有望分野であるスマート社会向けにマイコン、アナログおよびパワー半導体、SoCを組み合わせたソリューションとしての提供を行うことでシェアの拡大を図っていくとする。特に自動車向けとしては、すでに国内外の電装品メーカーから2017~2020年モデルの主要デザインを獲得しているという。

2010年4月の統合時より行ってきた収益基盤強化施策

自動車分野では、マイコン、アナログ/パワー半導体などを一体化させたキットソリューションの活用を進めるといった施策にて、長期的視点に立った、顧客とのパートナーシップを構築しているという

また、アナログ/パワー半導体とマイコンを組み合わせたキットソリューションによるモータインバータ制御やスマートフォン向けドライバIC、LTEチップセットなどによるスマートフォン向けソリューションの強化を図っていくとするも、その一方で、ホームマルチメディア向けSoCの新製品開発を全面的に集約し、新規開発および研究開発活動を停止することを決定、研究開発費用の削減による収益の改善を図っていくなど、事業ポートフォリオの最適化を進め、収益力のあるものに変化させていくとしており、工場の再編などを含む固定費の削減と併せて、市況の変化に柔軟に対応できる機動的な費用構造への変革を果たすことで、2014年度(2014年3月期)で、営業利益率10%以上の達成を目指していくとした。

2012年7月に発表した国内工場再編における各工場のポジションと、具体的な譲渡などの時期の目安。これに伴いポートフォリオの見直しも進められ、固定費の低減と併せることで、2014年度で営業利益率10%以上の達成を目指すとしている