横浜市立大学(横浜市大)は、主に血圧や電解質の調節を行っているレニン-アンジオテンシン系の一因子であり、これを負に制御しているACE2(Angiotensin Converting Enzyme 2)が、アミノ酸吸収や腸内環境を整える働きをしていることを突き止めたと発表した。同成果は同大循環器・腎臓内科学の橋本達夫 助教、オーストリア科学アカデミーのIMBA研究所、筑波大学TARAセンターの共同研究グループによるもので、科学雑誌「Nature」(7月26日号)に掲載された。
世界では10億以上の人々が栄養不良にあり、現代でも人類死亡の主な原因となり、その多くの場合に下痢や腸炎を伴う。特にアミノ酸欠乏ではペラグラという下痢、皮膚炎、脳症を発症するが、偏った栄養摂取が腸内環境をどのように制御しているかは、これまでよくわかっていなかった。
そこで研究グループは、レニン-アンジオテンシン系の構成要素であるACE2の遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウス)に、実験的に腸炎モデルを作成。研究の結果、ACE2ノックアウトマウスでは、腸炎の程度、腸管上皮の抗菌ペプチド発現や、腸内細菌叢の構成に大きな違いがあることが判明し、ペラグラ治療薬であるニコチンアミドがこれらの違いを改善することを確認したという。
この結果は、アミノ酸吸収障害という栄養不良でみられる腸炎のメカニズムを解明。すなわち、腸管上皮でのアミノ酸吸収が、抗菌ペプチド発現、腸内細菌叢を制御していることを確認したもので、研究グループでは今後、どのようなアミノ酸が腸内環境維持に必要なのか、腸炎を含むさまざまな病態での解析が期待され、それぞれの病態で、必要なアミノ酸を補充することが、症状改善につながる可能性があるとコメントしている。