理化学研究所(理研)は7月25日、グラインダーマンと共に、8月24日から26日までの3日間、同脳科学総合研究センター 適応知性研究チームが開発した「代替現実(Substitutional Reality:SR)システム」を用いた体験型パフォーマンス「MIRAGE」を、日本科学未来館(参加費無料)において開催することを正式発表した。

SRシステムは、発表記事がコチラで、体験リポート記事がコチラとなる。理研 脳科学総合研究センター 適応知性研究チームのチームリーダーの藤井直敬氏、研究員の脇坂崇平氏らが開発したバーチャルリアリティの進化型システムの1つだ。

体験者は、方位を検出できるセンサを搭載したカメラ搭載型ヘッドマウントディスプレイをかぶって、リアルタイムの映像や音声、もしくは過去に撮影されたものを視聴することになる。

こう書くとなんてことないと思うだろうが、例え過去の映像であってもパノラマカメラで撮影された動画なので頭を振って360度上下左右前後どこでも自由に観られるため、リアルタイムの映像なのか過去の映像なのかまったく区別がつかない。

それにより、あらかじめ編集してある映像を使って、実際にはリアルタイムでは目の前で起きていないことなのに、それがたった今目の前で起きている現実であるかのように体験者に信じさせること、あるいはリアルタイムなのか過去なのか両者を区別なく視聴させることを可能にしているのである。

そのため、SRシステムは発表された当初から、これまでとはまったく異なるユーザー体験を提供するヒューマンインタフェースとしての展開が期待されていたというわけだ。

そんなSRシステムの可能性を探り、タグチヒトシ代表が率いるパフォーマンスグループ「グラインダーマン」、音楽家・音響デザイナーevalaと理研の藤井チームリーダーらが共にその新たな展開として作り上げた体験型のパフォーマンスアートが、MIRAGEなのである。

MIRAGEでは、SRシステムを直接体験するのは1名のみとなる。体験者はSRシステムを通じて、現在と過去を行き来しながら、10分間のダンサーのパフォーマンスを体験するという内容だ。

ただし、目の前のダンサーはもしかしたら過去に記録されたものかも知れないし、本当に目の前で踊っているのかも知れない。しかし、体験者にはそれがどちらなのかは区別できず、「自分はどこにいるのだろう? 今はいつの時点なのだろう?」、「現実とはなんだろう?」といった通常感じることのないさまざまな疑問が湧き起こる。

そのような体験者の直接的な体験は、それを観る観客やダンサーにも共有され、異なる形で現れる。なぜなら、観客は現実と体験者の主観的経験の両者を体験し、そして比較することができ、一方のダンサーはその体験を作り出している中心でありつつも、その一部にすぎないからだ。つまり、MIRAGEの中では、体験者、ダンサー、観客が入れ子状になり、それぞれの体験が連鎖し、相互に影響を与えつつ時間が進んでいくのである。

MIRAGEの経験は、ヒトが生きている現実世界を、ヒトの脳がどのように形作っているのかという疑問へ誘うという。研究者は、MIRAGEを経験する中からその答えが生まれて来るはずだとする。MIRAGEは、「現実」に関する、これまでにない、まったく新しい感覚と経験を提供する内容なのだ。なかなか体験できない機会なので、ぜひ体験してみてほしい。

  • 日時:8月24日(金)、25(土)
  • 公演:11:00より16:30まで各回15分ごと
  • ショートトーク:13:30、16:30(各回30分、予約不要)
  • ショートトーク中の公演はなし。

  • 日時:8月26日(日)

  • 公演:11:00より15:00まで各回15分ごと
  • アフタートーク:15:00~16:30(要予約)

  • 参加費:無料

  • 会場:日本科学未来館7階イノベーションホール

なお参加方法は、「体験」と「観覧」の2種類で、それぞれの違いは以下の通り。

  • 体験:1回の公演につき1人の体験となり、希望者はあらかじめMIRAGEの公式ウェブサイトからの予約が必要。体験時間は約10分間。年齢制限があり、高校生以上。
  • 観覧:体験者がMIRAGEを体験している様子を、体験者の背後にある観客席から観覧可能。予約は不要だが、未就学児の参加は不可。

SRシステム体験用の試作型ヘッドアップディスプレイの1つ。被っているのは開発者の理研の藤井チームリーダー