テクトロニクス社は7月23日、同社のオシロスコープを活用する高速シリアルバスのエンジニア向けにデバッグソリューションを強化したことを発表した。
シリアルバスの規格は年々増加しており、組み込み分野でもUSB 3.0やPCI Expressなどの高速インタフェースへの対応が求められるようになってきている。その一方で、製品の早期開発へのプレッシャーとは裏腹にエンジニアの数に限りがあったり、オシロスコープやプロトコル・アナライザなど複数の計測器を組み合わせて問題を発見、解決をする必要があるなど、開発の現場の負担は増加の一途となっている。
今回の同社のソリューション強化は、オシロスコープだけでそうした状況の解決を目指したものとなっている。例えば、シリアルバスに対するトリガ/デコード/サーチ機能として、自動車分野の電子回路の増加への対応のためCAN/LIN/FlexRayやSPIの2ワイヤへのサポートがなされたほか、航空機向けのMIL-STD-1553への対応も行われた。また、PCI Express Gen1およびGen2向けハードウェアトリガサポートにより、どんなパケットが送られていて、バスがどのようなステートになっているかをオシロスコープの画面上で確認することが可能となった(Gen3の伝送速度に対してはソフトトリガ的に対応が可能だという)。これらのプロトコル・デコードのイベントテーブルなどの各ウインドゥに関しては、ユーザー側で画面を操作することで、インタフェースの配置を自由に設定することが可能だ。
さらに特定の波形特性において、トリガイベントとして領域指定が可能なビジュアルトリガ機能も強化。従来は決まった形状の図形を用いてシリアルパターンの取り込みなどを行っていたが、今回の機能強化によりフリーハンドで領域形状を設定することが可能になったほか、対象とするパターンに合わせた色設定なども行えるようになった。
加えて、サーチ/マーク機能として、トリガをかけて見つけた異常波形を条件化し、その条件に一致するすべてのイベントを自動的にマーキングすることが可能となった。これにより、異常現象がどういう理由で発生するのかといった特性を理解しやすくなると同社では説明する。
このほか、同社が提供するジッタ/タイミング解析ツール「DPOJET」も機能強化が施された。測定サポートとして、ジッタ分解にBUJ(Bounded Uncorrelated Jitter:有界非相関ジッタ)を追加。これによりクロストークノイズなどをBUJとして分離することができるようになり、データ相関ジッタ(DDJ)と非相関ジッタのジッタ分離が可能になる。
また、デジタルチャネルの測定の強化として、高速シリアル/メモリのサポート範囲が拡大され、ThunderboltやMOST Txをサポートが含まれた。MOSTはMOST-50のほか、MOST-150もサポートしているほか、Thunderboltは2レーン同時テストを可能としている。さらにメモリ測定としてLPDDR2およびDDR3の測定サポートも追加された。
加えて、ユーザーからの独自解析を行いたいというニーズに対応するための「Application Developer's Kit(ADK)」も用意。これにより、オシロスコープに取り込んだ波形データをユーザーが自由に活用できるようになり、MALTABなどのツールで作ったスクリプトを使った解析が可能になるほか、同社としてもMATLAB用のテンプレートを用意しており、オシロスコープ上でMATLABのフィルタなどを活用できるようになるという。
なお、これらのソリューションは同社の「DPO7000Cシリーズ」、「MSO/DSA/DPO70000C/Dシリーズ」、「MSO/DPO5000シリーズ」に対応している。デジタル統合やアドバンスト・サーチ/マーク、ユーザー定義のカスタム解析などの機能はファームウェアのアップデートにより無料で対応可能となっているほか、「DJA拡張ジッタ/アイ解析 DPOJET Advanced」は148万円(税別)、「MOSTコンプライアンス/デバッグ・ソリューション」は29万8000円(税別)などの各種機能に関してはオプションで有料となっている(すでにDPOJETなどを利用しているユーザーは無料でのアップデート対応)。