日本機械学会はこのほど、2012年度機械遺産として5件を認定したと発表した。今回、認定されたのは「ステンレス鋼製車両群(東急5200系と7000系)」「吉野山ロープウェイ」「池貝工場製第1号旋盤(現存最古の動力旋盤)」「卓上複写機リコピー101」「ウォシュレットG(温水洗浄便座)」。
機械遺産第51号となった「ステンレス鋼製車両群」のうち、東急5200系は従来の鋼製車両に代わって無塗装によるメンテナンスフリー化を目指し、1958年に日本で初めて外板にステンレス鋼を採用した車両であり、東急7000系は東急車輛製造が米バッドから構体製造技術を導入しながら、独自技術で国内仕様に適合化して製造した日本初のオールステンレス車両。
同協会では、「これらの車両は軽量化と車体の無塗装化を可能とし、現在の通勤車両を中心として広く普及しているステンレス車両の原型となった重要な遺産」としている。
機械遺産第52号となった「吉野山ロープウェイ」は、旅客運送用として1929年3月12日より千本口駅と吉野山駅間の全長349メートル、高低差103メートルにゴンドラ2台で運行開始した、国内現役最古のロープウェイ。
架線支持部材や支柱は架設した安全索道商会(現在、安全索道)の保守により80年以上経過した現在でも現役であり、同協会は「これらは当時のわが国の材料力学、金属材料技術の優秀さを示す証と言える」としている。
機械遺産第53号となった「池貝工場製第1号旋盤(現存最古の動力旋盤)」は、日本最初の工作機械メーカーである池貝工場(後の池貝鉄工所、現在、池貝)の創業者である池貝庄太郎氏と弟の喜四郎氏が1889年に自社の工場設備機械として製作した英式9フィート旋盤であり、動力式としては国産最古だという。
同協会は、「製作当時、同工場には英式の12フィートと6フィートの2台の旋盤があっただけと言われており、乏しい機材の中で製作されたこの旋盤はマザーマシン国産化の道を拓き、日本の機械工業発展の礎となった記念碑」とコメントしている。
機械遺産第54号となった「卓上複写機リコピー101」は、理研光学工業(現在、リコー)が1955年に発売した国内初の露光・現像一体の卓上型ジアゾ湿式複写機。同協会によると、同時期に開発されたジアゾ感光紙により、現像後の水洗いが不要となり、無水・無臭の露光・現像を実現した画期的事務用機械だったという。
機械遺産第55号となった「ウォシュレットG」は、アメリカン・ビデ製医療用洗浄便座「ウォッシュエアシート」との輸入販売を始めた東洋陶器(現在、TOTO)が一般家庭向けに開発したもの。同社は開発にあたって、日本人に適した製品にするためにおしりの洗浄ポイントや水量・水温、噴射角度などのデータを収集し、それらをもとに技術を開発し、1980年に発売を開始した。
8月の機械の日には、「機械遺産」認定証および感謝状の授与が行われる予定。