シーメンスPLMソフトウェアは7月19日、都内でプライベートイベント「Siemens PLM Connection Japan 2012」を開催し、米Siemens PLM Software会長のTony Affuso氏が同社の現況を、日本法人シーメンスPLMソフトウェアの代表取締役社長 兼 Siemens PLM Softwareバイスプレジデントの島田太郎氏が日本での取り組みをそれぞれ説明した。
より良いツールの提供で顧客の成功のサポートを目指す
米Siemens PLM Software会長のTony Affuso氏 |
「我々の目指すところは、より良いツールを提供することで、顧客の意思決定の迅速化とよい製品づくりをサポートすることだ。現在、モノづくりは複雑化しており、さまざまな課題を抱えるようになってきている。特に扱うデジタルデータが膨大になり、その管理に労力が費やされるようになってきた」(Affuso氏)。データの増加や高機能化により、要求事項が多くなり、それに伴いより多くの人が開発に関わることとなるが、ビジネスの観点からはより迅速に意思決定を図り、利益を上げることが求められるといった複雑な事態となっている。「特に意思決定のプロセスは膨大になっており、都度、最適な判断を必要とするようになってきた。単純なパーツの変更を行うにしても、多くの関連部署やエンジニアなどがその意思を理解する必要がある。こうしたプロセスの複雑性を解決するための使いやすいソリューションが必要で、その実現のために我々は研究開発を行っている」(同)とする。
こうした背景から、同社ではツール提供を行っていく上で3つの要素を柱としているという。1つ目は必要な情報を必要なタイミングで統合された形でインテリジェントに提供すること。例えば1つのデータベース上のデータに変更があった際、それを活用しているすべてのデータにも変更を加える必要があり、それぞれが使うタイミングに併せて最新のデータを提供する必要がある。
2つ目は将来にも対応可能なコンピュータ/ネットワークのアーキテクチャの構築。世界中の開発拠点が連携した環境下で設計・開発を行う際にはネットワークが活用されるわけだが、その連携を踏まえて将来にわたって使えるツールである必要がある。
3つ目は、使い勝手の高いユーザー体験を提供すること。複雑かつ増大する開発データに対し、ユーザーは必要とするデータを簡単にアクセスすることを求めており、それに対し同社では「Active Workstation(AWS)」と呼ぶ次世代技術の開発を進めているという。同技術を活用すると、技術情報の高速検索やパーツ番号が分からない場合でも形状検索などを行うことが可能になるほか、PLMとほかのシステムエンジニアリングなどを結びつけることが可能になるという。すでにAWSは同社の早期採用プログラムに加盟しているユーザーに提供されており、使い勝手のフィードバックを受けている段階にあるという。日本では2013年以降の提供が予定されているという。
こうした取り組みの結果、2011年は3500の新規顧客を獲得し、71000のカスタマが720万ライセンスを活用する状態となった。その結果、MCAD市場の伸び率よりも高い伸び率で成長を達成し、CAx市場でのシェアも拡大したという。
品質向上とグローバル対応でシェア拡大を狙う日本市場
日本法人シーメンスPLMソフトウェアの代表取締役社長 兼 Siemens PLM Softwareバイスプレジデントの島田太郎氏 |
一方、日本法人としても5つの重点項目に基づいてビジネスを進めているという。1つ目は製品品質の向上。「日本のユーザーは安心して使える品質を求めている」(島田氏)とのことで、PLM業界で他社に比べるまでもない高い品質のものを提供していくためのテストや使い方などを地道に展開していくとしている。
2つ目はパフォーマンス。色々なオペレーションを行った際にいかに素早く情報が返ってくるかが重要で、このポイントを特に日本は重視しているとのことで、開発チームに対してパフォーマンス向上の要求を常に出し続けているという。
3つ目はグローバルコラボレーションで、これまでのような海外活用ではなく、ものを売れるところで作ることを前提に、必要な部分を世界規模で共有する必要がある。「世界で1つのツールを共通して使うような感覚が必要で、そういった意味では我々にアドバンテージがあると思っている」(島田氏)という。
また、4つ目として「システムズ・エンジニアリング」の考え方を指摘。「メカトロニクスとエレクトロニクス、ソフトウェアなどをシステマチックにどのファンクションをどのようにしてどこに落とし込むかをシステム的に実現しないといけない」として、各ファンクションを抽象的に分解することで、なんのためにこの設計を行っているのか、なぜこういった設計になっているのか、この設計を変更するとどういった影響が起きるのかが分かり、これにより真に製品のモジュール化ができるようになり、再利用を行うときに、なぜ、それを利用するべきか、システム的に考えて製品を作れるようになるとのことで、「顧客と一緒に作り、絶対に失敗をさせないという基本方針を今後も変わらず守っていく」ことを強調した。
そして5つ目として「設計と製造の融合」を挙げた。PDMがPLMへと進化することで生産性が向上してきたが、設計と製造の部門では、ある程度限られた構成部分をデータ変換することで流用するにとどまっているのが大半で、これを共通のデータモデル化することで、そうした垣根を取り払うことができるようになり、設計と製造を近づけるようになるとし、「この実現のためには多大な研究投資が必要だが、我々はこの実現に対するコミットをしてきており、研究投資を継続していく」ことで、顧客の成功を支援していくとした。