前回、スマートフォン向けIP電話ソリューション「U3 Voice(ユーキューブ ボイス)」が提供されるに至った背景と、サービスの概要について紹介した。その内容から、U3 Voiceが、スマートフォンの2台持ちや社用通話の個人払いを解消するメリットの大きいサービスであることがご理解いただけただろう。

ネクストジェン クラウドサービス事業本部 副本部長 林邦洋氏

しかし、中堅・中小企業の経営者の中には、前回の記事をご覧になって不安を覚えた方もいるかもしれない。というのも、運用の変更には追加コストが付き物。特に、従業員が私物のスマートフォンを自然と使い始めたような企業においては、U3 Voiceを導入すると各従業員の社用通話分が単純に追加コストになるため、経費が嵩むという考えに至ってもおかしくはない。

今回はそんな不安を解消するべく、ネクストジェン クラウドサービス事業本部 副本部長林邦洋氏の話を基に、企業経営者の視点からコスト面を中心にU3 Voiceがもたらすメリットについて言及してみたい。

個人用スマートフォンに社用電話番号を付加できる「U3 Voice」

まずは簡単にU3 Voiceについておさらいしておこう。

U3 Voiceは、前述のとおりスマートフォン向けのIP電話ソリューションである。社員の手持ちのスマートフォンに専用アプリケーションをインストールするだけで「050」番台の番号が利用できるメニューがある。携帯電話会社によって初めから付与されている電話番号を個人用として、新たに付与された050番号を社用として利用すれば、1台のスマートフォンでありながら、着信の際にプライベートとビジネスのどちらの用件なのかも一目で把握できる。もちろん、社用と個人用の通話料金を分割して精算する"公私分計"も自然と実現される。これがBYOD(Bring Your Own Device : 業務における私物利用)を導入するメリットでもある。

また、スマートフォンで懸念されるセキュリティ面についても考慮されている。通常であれば端末内に保存される電話帳情報を、U3 Voiceではクラウド環境に保存するサービスの提供を予定しており、端末を紛失した際には該当ユーザーからの電話帳へのアクセスを拒否する設定にしておけば、情報漏えいを防ぐことができる(サービス提供開始時期は後日発表)。

IP電話であるため、外線発信の場合も通常の携帯電話からの発信と比べると格安だ。さらに、3G、WiMAX/LTE、WiFiのいずれの回線からも使用可能なので、インターネットへの接続環境さえあれば、電波の繋がらない場所や海外からでも無料もしくは低価格での通話が現実のものとなる。

U3 Voice、3つのサービスタイプ

以上のような特徴を持つU3 Voiceだが、提供プランは企業のニーズに合わせて、「ベーシックタイプ」、「オフィスタイプ」、「クラウドPBXタイプ」の3タイプを用意している。前回、スライドで簡単に紹介したが、改めてそれぞれの内容をご覧いただこう。

まず1つ目のベーシックタイプは、「従業員のスマートフォンにU3 Voiceのアプリケーションをインストールするだけの最もシンプルなサービス」(林氏)である。先ほど挙げたU3 Voiceの基本的なメリットをすべて享受することができる。

U3 Voice ベーシックタイプ

2つ目のオフィスタイプは、スマートフォンが使うIP電話のネットワークと、社内の固定電話として利用している既存のビジネスフォンのネットワークとを連携できるサービスになる。こちらは、「1つ目のタイプのメリットをそのまますべて引き継ぎつつ、固定電話とスマートフォン(のIP電話)の間の通話も無料にすることができる」(林氏)。外出中の社員に固定電話から連絡する場合も通話料が無料になるというのはうれしい利点だ。

なお、こちらのオフィス内設備に対する導入作業も非常に簡単。基本的に企業が使っている既存のビジネスフォンの設定を変更するか、アダプタを追加するだけである。機種にもよるが、サクサなどの一般的なビジネスフォンであれば、既存の設備を入れ替えることなく利用できる。

U3 Voice オフィスタイプ

そして最後のクラウドPBXタイプは、PBXの機能をクラウドで提供するサービスになる。この場合、社内の電話網をすべてIP化するかたちだ。自社でPBXを用意する必要がないため、新規オフィス開設時などにはコストを大幅に低減できる。

こちらの場合、固定電話にIP電話機を使用し、スマートフォンと固定電話の間で「パーク保留(通話中に保留にして異なる端末から通話を引き継げる機能)」や「転送」の機能を利用することができる。社外からの問い合わせなどにもスムーズに対応できるだろう。

U3 Voice クラウドPBXタイプ

5年間で1000万円以上のコスト削減に

以上のとおり随所で通話料が無料になるU3 Voiceだが、経営者視点で気になるのは、やはり企業側で負担することになる社用通話のコストだろう。

この点について、林氏は次のように答える。

「通常、電話で頻繁に連絡をとる相手というのはそう多くはない。また、ビジネスにおいてはその大半が同じ部署のメンバーとの通話ということも多い。現在、一般的なオフィス環境では、社内の固定電話から外出中の社員のスマートフォンに電話をかけるケースが少なくないはず。その通話料が無料になると考えれば、各社員のスマートフォンからの社用通話を新たに負担することになったとしても、それほど大きなコスト増にはならないだろう」

そもそもU3 Voiceから外部への通話料は、通常の携帯回線の通話料に比べると大幅に安い。また、マルチキャリア対応のU3 Voiceであれば、携帯電話会社が独自に提供している携帯電話とオフィスとの無料通話サービスとは異なり、異なる携帯電話会社の端末を利用することもできることが利点だろう。この機会にBYOD採用に踏み切れば、これまで企業で支払っていたパケット料金まで削減できる。したがって特に、ビジネス用携帯電話を社員に支給済みの企業においては、導入するだけで大きな経費削減が期待できる。

続けて林氏が強調したのが、導入コストの低さである。

前述のとおり、スマートフォンをU3 Voiceに対応させるのに必要なのは、アプリケーションのインストールだけ。また、ビジネスフォンを対応させる場合も、U3 Voiceに対応するアダプタを追加するだけで、既存の設備をそのまま利用することができる。一般にビジネスフォンはリースで利用するケースが多いが、U3 Voiceなら契約期間の残った設備を解約する必要もない。さらに、U3 Voiceを導入すると、社員一人一人にビジネス用の050番号を持たせることもできるため、固定電話の削減が可能になる。リース契約する端末数を減らせば、固定費削減にもつながるだろう。

では、具体的にどの程度のコスト減が見込まれるのか。

林氏は、「あくまでケースバイケース」と前置きしたうえで、独自の試算を紹介。現在50台の固定電話、20台のスマートフォンを貸与している企業において、20台のスマートフォンをすべて私物端末にしてU3 Voiceをインストールする運用にしたうえで、固定電話はオフィス常駐社員向けに数台のみを残し、さらにクラウドPBXを利用することにした場合、コスト削減効果は5年間でなんと1000万円以上にも達するという。

とはいえ、一般的な中堅・中小企業においていきなり大きな刷新を実施するというのは現実的ではないだろう。そこで、林氏は「ぜひとも3つのサービスタイプを効果的に活用し、試しながら導入してほしい」とアドバイスする。

「まずは自社にとって一番ハードルが低いと思われるタイプを導入してみて、スマートフォンやIP電話機の良さを実感していただきたい。そして最終的にクラウドPBXへと移行するといった流れをご検討いただいてはいかがだろうか。我々もまた、U3 Voiceを通じてビジネスコミュニケーションの質を向上し、顧客企業に競争力をもたらすことができるよう尽力していきたい」(林氏)

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