日立製作所は、サイズやレイアウトを柔軟に設計でき、短期間に低コストで構築可能な屋外設置式のコンテナ型データセンタ「フレキシブルデザインコンテナ」を、7月6日から販売開始する。
コンテナ型データセンタについては、短期間かつ低コストで構築でき、増設も容易なデータセンタとして、海外を中心に普及が進んでいる。国内でも、自然災害をはじめとするさまざまな緊急事態の発生に備え、BCP(Business Continuity Plan : 事業継続計画)を強化する取り組みの一つとして、バックアップ用のデータセンタの早期構築のニーズなどが増加。また、クラウドの普及などを背景に、省電力・高集積なデータセンタ環境構築のニーズが拡大しており、モジュール内に機器の稼働効率が最大限になるよう最適配置することでデータセンタの省電力化、省スペース化を実現するモジュール型データセンタが注目されていると同社は指摘している。
こういったコンテナ型データセンタへの関心の高まりを受け、日立は「モジュール型データセンタ」のラインナップにコンテナ型データセンタ「フレキシブルデザインコンテナ」を追加した。これは、屋外に設置したコンテナ内にサーバやストレージなどのIT機器を搭載したラック、冷却用の空調機器などのIT設備を、稼働効率が最大となるように配置することで、省電力・高集積なデータセンタを実現し、無人運転を支援する監視システムとともに提供するものだ。日立システムズでは、従来より小規模で可搬性のあるコンテナ型データセンタを活用したシステム運用サービスを提供してきたが、それに加えて、日立が「フレキシブルデザインコンテナ」を提供することで、日立グループとしてより幅広いニーズに対応していく。
通常のコンテナ型データセンタは、コンテナのままで輸送できる特長がある一方、コンテナサイズに制約があるため、保守スペースの確保やIT機器の高集積化、冷却効率の最適化が課題となることが多いが、「フレキシブルデザインコンテナ」は、システムの規模・構成に応じてコンテナのサイズを柔軟に決め、現地でコンテナを組み立てることができるため、設備の稼働効率を高めつつ、十分な保守スペースを確保するなど、顧客ニーズに対応したデータセンタを短期間で構築できる。
「フレキシブルデザインコンテナ」は、独立行政法人 情報通信研究機構(以下、NICT)において、情報通信技術の研究開発や新たなクラウドサービス、システムの研究開発、実証を行うためのクラウド基盤用のコンテナ型データセンタとして先行的に採用されており、約2.5カ月という短期間で構築し、4月から順次稼働を開始している。本データセンタは、科学データを蓄積するための「ストレージ重点型システム」、新世代通信網テストベッド上の仮想マシンからなるサービス開発環境などを中小ベンチャー企業に提供する「IaaS型クラウドサービスシステム」、自動音声翻訳などのユニバーサルコミュニケーション技術の研究開発を担う「SaaS型クラウドサービスシステム」の3つのクラウドサービス基盤を兼ね備えたもの。
同データセンタは、監視システムを整備することで無人運転が可能なため、無人で運用されるコンテナ型データセンタについては建築確認を不要とする、2011年3月の国土交通省の通達を適用。空調設備や電源設備なども含めて、2.5カ月という短期間での構築を実現した。データセンタ内の冷却は、水冷方式と比べて耐久性が高く、メンテナンスコストが低いという特長を持つ局所空冷方式を採用した。屋外設置式のデータセンタの冷却方式としては外気冷却方式もあるが、設置場所の気温、湿度などの環境条件から、気密性の高い局所空冷方式を採用した。データセンタやサーバ室のエネルギー効率を示す指標のひとつであるPUE値は約1.25(日立試算値)と、優れたエネルギー効率を実現している。
今後、クラウド(クラウドコンピューティング)システムやバックアップシステムを設置するデータセンタを早期に立ち上げるなど、データセンタを短期間にコストを抑えて構築したい顧客などを対象として積極的に提案を行っていくとのことだ。