エプソンは28日、ビジネスプロジェクターの新商品10機種を発表した。内訳はモバイルモデル4機種、多機能パワーモデル4機種、スタンダードモデル2機種となっており、6月29日より順次発売していく。
ビジネスプロジェクター市場における顧客ニーズ
エプソン販売 取締役 販売推進本部長の中野修義氏によれば、2011年度のプロジェクター国内販売台数においてエプソンが17年連続国内シェアNo.1を達成したという(富士キメラ総研調べ) 。なお、2012年度(4月~5月)の累計シェアは54%となっているとのことだ。
中野氏によれば、ビジネスプロジェクター市場では、商品タイプによって顧客のニーズが異なってくるという。リッチな機能と高い明るさを誇る「多機能パワーモデル」では投影画像の明るさや解像度を重視する声が多く、標準的なスペックの「スタンダードモデル」では価格面を重視、持ち歩きを重視した薄型軽量の「モバイルモデル」は、サイズを重視しているという。
また、スタンダードモデルについてはオフィス利用のほかに個人利用・兼用利用しているユーザーも15%存在しており、同社ではホームシアター用のプロジェクターよりも安価なオフィス用スタンダードモデルを家庭用として使う層を見据え、ホームシアターの「入門機」としても販売していく。
各モデルごとの長所・改良点
スマホとの連携機能を搭載した「モバイルモデル」
持ち歩きを重視した「モバイルモデル」には、「EB-1776W」、「EB-1771W」、「EB-1761W」、「EB-1751」の4機種が登場。3LCD方式プロジェクターとしては世界最薄の44mm(エプソン調べ)、A4サイズに収まる設置面積、重さ約1.7kgとなっており、前モデルからの特徴である"バッグに入れて気軽に持ち運べるコンパクトボディ"を継承。「EB-1776W」、「EB-1771W」は3,000lm(ルーメン)、「EB-1761W」、「EB-1751」は2,600lmと十分な明るさを持ち、短い距離でも大きな画面で投写が可能な短焦点レンズを搭載している。
「EB-1776W」については、設置して電源を入れるとプロジェクターが傾きや移動を検知し、映像が途切れることなく自動でタテヨコの台形補正とフォーカスを調整する「ピタッと補正」機能が搭載されている。また、スクリーンに投影する際、自動で枠にぴったり合わせる「フレームフィット」機能も搭載するなど、出先ですぐにセットアップ可能にする機能が盛り込まれた。
持ち歩いて使うスマートフォンの画像をそのまま投影する連携機能「Epson iProjection」に対応。同機能に関しては、iOSアプリに続いて、Android版アプリも7月にリリースされる。また、USBストレージを接続しPCレスで画像を投影する「スライドショー」機能で、新たにPDFファイル、Motion JPEGの再生を可能とするなど、プレゼン環境の変化に対応した新機能が追加された。
また、従来はセキュリティやスピードの面で課題があった、プロジェクター本体をアクセスポイントとする「かんたんモード」を強化し、セキュアな環境下でPCやスマートフォンを利用することができるようになった。
DisplayPort端子を初搭載した「多機能パワーモデル」
多機能パワーモデルの「EB-1965」、「EB-1960」は5000lm、「EB-1945W」、「EB-1940W」は4200lmと、他モデルに比べてワンランク上の明るさを実現した。
このクラスの製品には、同社の製品ではじめて次世代映像インターフェイス「Display Port」が搭載された。HDMI端子も搭載しているため、映像機器との接続やハイビジョン映像の高画質再生も可能となっている。
「EB-1965」と「EB-1945W」に関しては、最大32台のPCをネットワーク経由で接続し、同時に4画面を表示できる「EasyMP Multi PC Projection」機能にも対応。
モバイルモデルの「EB-1776W」と同じく、プロジェクターが傾きや移動を検知し、映像を途切れさせることなく自動でタテヨコの台形補正を行う「ピタッと補正」機能を搭載。自動でスクリーンの枠に合わせる「フレームフィット」機能も備えている。
このほかにも、医療現場のカンファレンスや研修会などで活用できるカラーモード「DICOM SIMモード」を搭載。また、各モデル一度に2種類の映像を左右に投写できる「2画面表示」機能にも対応している。
DisplayPort端子を初搭載した「スタンダードモデル」
スタンダードモデルの「EB-S12H」、「EB-S02H」は、基本性能と使いやすさを追求した新モデル。先述したホームシアターでの用途も考慮に入れ、ビジネスでもホームでも気軽に大画面が導入できる低価格プロジェクターとなっている。
この新モデルからHDMI端子を搭載し、映像機器やゲーム機器などと簡単に接続してハイビジョン映像を投写することが可能になった。
投写映像に書き込みも可能なフルハイビジョン対応書画カメラ
プロジェクター対応オプションの新商品としては、光学12倍ズーム搭載、フルハイビジョン対応書画カメラ(実物投影機)の「ELPDC20」が発表された。こちらは9月中旬より発売されるものだ。
同製品は光学12倍ズームを搭載しており、A3サイズから近撮まで、くっきりと鮮やかな撮影が可能。「10倍デジタルズーム」と組み合わせることで、「最大120倍ズーム相当」で使用できる。フルハイビジョン画質のデータを圧縮することなく転送できるHDMI端子を標準装備し、フルハイビジョンに対応したデジタルテレビなどとも接続できる。
1/2.7 CMOSセンサーで、フルハイビジョン動画の撮影が可能。動画性能は最大30フレームで、動きのあるシーンでも滑らかに撮影できる。音声マイクと1GBメモリーを内蔵しているので、画像だけではなく動画と音声を記録・保存して再利用可能となっている。
書画カメラにUSBマウス、USBタブレットを接続すれば、内蔵されたツールバーを使って投写画面に文字や線などを書き込める「PCフリー書込み」機能に対応。注目してほしい箇所に印をつけたり、リアルタイムに添削したりするなどの使い方も可能だ。持ち運び・収納しやすい折りたたみ可能なアーム機構で、専用キャリングケースも付属しているため、コンパクトに収納可能となっている。
今後の販売施策と販売目標数
エプソン販売 VP MD部 部長の久保厚氏は、新製品の今後の販売施策を紹介。「多機能パワーモデル」については過去モデルとの性能比較、「モバイルモデル」は昨今のプレゼン環境への対応や軽量薄型である点を訴求、そして「スタンダードモデル」については、新規購入が60%を占めることもあり、ビジネスユースに限定せず、幅広いチャネルでの販売を行っていくという。
そして、今後は同製品群の市場を拡大すると共に、市場でのシェア拡大も同時に狙っていくという。今回発表した新モデルを含めたビジネスプロジェクターの合計販売目標について、今後1年間で「市場シェアの60%」を確保すると同時に、「12万台」の販売達成を掲げた。