CO2削減を軸とした「NECグループ環境経営行動計画2017/2030」

NEC 執行役員常務 福井 雅輝氏

NECは、2011年度のNECグループの環境活動実績をまとめた「NEC環境アニュアルレポート2012」を発行した。それに際して、同社は説明会を開催し、2010年6月に発表した中長期の行動計画「NECグループ環境経営行動計画2017/2030」の2年目となる2011年度の進捗状況について紹介すると共に、今後の目標を掲げた。

「NECグループ環境経営行動計画2017/2030」は、中期目標設定を2017年度、長期目標設定を2030年度として策定されたもの。低炭素社会の実現ならびに生態系、資源循環といった側面から、4つの目標を設定している。

4つの目標とは、 ①低炭素:社会全体のCO2削減にITソリューションで貢献 ②低炭素:製品のエネルギー効率の改善 ③生態系・生物多様性保全に向けた活動の強化 ④資源循環、省資源の推進 だ。

「NECグループ環境経営行動計画2017/2030」策定概要

低炭素社会に向けた今後の取り組み。2、3の内容については後述

2011年度の成果報告、低炭素社会実現に向けた実績数値を公開

NEC CSR・環境推進本部長 堀之内 力氏

低炭素社会の実現に関しては2つの目標が設定されており、1つ目の「社会全体のCO2削減にITソリューションで貢献」するという目標に対しては、2011年度の累計実績で443万トン削減、2011年度単年での実績では231万トン削減となったという。この数字は、2010年度の削減実績でもあった212万トンを19万トン上回る結果となっている。そして、2017年度には、1,500万トンのCO2削減効果の実現を目指している。

NECでは、この数値の達成の要因として、オフィスの節電対策を支援するオフィスサービス「エネパルPCパック」や、オフィスの消費電力を“見える化”する「エネパルOffice」、照明・空調など最大24種の機器の消費電力を個別集計可能な「インテリジェント分電盤」などの事例を紹介した。

2010年度と比較したCO2削減実績と今後の見通し

「エネパルPCパック」は社員一人ひとりのPCの消費電力を“見える化”する

もうひとつの目標となる、「製品のエネルギー効率の改善」という側面では、2005年度の製品と比べて66%の削減を実現。目標値の62%をわずかに上回る結果となった。ただ、同社では2017年度には、2005年度製品比80%の改善(全製品加重平均)を実現するとしている。

製品のエネルギー効率の改善におけるCO2削減値は、目標数値とほぼ同等に実現した

CO2削減のための技術として、高性能冷却技術により、稼働上限温度が摂氏40度まで上がった製品群や、電力変換によるエネルギー損失を提言するHVDC(高電圧直流給電)対応の機器が挙げられた

3つ目の目標である「生態系・生物多様性保全に向けた活動の強化」については、「NECグループ生物多様性行動指針」に基づいた活動内容の充実を図り、2011年度実績で8,032人が保全活動に参加(2011年度目標:6600人、2010年度実績:6211人)したほか、生物多様性貢献活動ガイドラインの展開により、海外を中心に新規活動が増加(新規活動で1656名の参加者増)したという。なお、2017年度目標は同様の社会貢献活動を2010年度比で倍増させていくとのことだ。

4つ目の「資源循環、省資源の推進」に関しては、NECの環境への貢献度の高い全てのプラスチック使用製品にバイオプラスチックを導入することにより、石油資源の枯渇問題への対応に貢献しており、2011年度実績では、6製品群に適用(2010年度実績:4製品群)した。従来のビジネスPC、決済端末、携帯型業務端末、照明器具に加え、新たに液晶プロジェクターおよびPOS端末に適用したという。

NECグループにおけるCO2排出量実績

結果として、2011年度のNECグループにおけるCO2排出量実績は、前年度と比較して23%削減を達成し、37万トンとなった(2010年度比:△23%、△9万トン)。また、同社は、独自に集計・算出している「炭素統計」と呼ばれる集計/算出方法を、CO2排出/削減量の管理に適用しているが、2011年度における同統計の結果は、純削減貢献量が約30万トン増加となり、増加分の多くが「ITソリューションによる削減」に該当していた。

2010年度と比較したCO2削減実績と今後の見通し

同社が独自に算出している「炭素統計」の実績値グラフ

「玉川事業場のスマートコミュニティ化」と「SCOPE3を含めた取り組み」

また、NECは「NECグループ環境経営行動計画2017/2030」に加え、新たな取り組みとして、「NEC玉川事業場のスマートコミュニティ化」と温室効果ガス(GHG)排出量の算定・報告の世界的な基準・ガイドラインである「GHGプロトコル」の1つ「SCOPE3対応の促進」という2つの項目を挙げた。

NEC玉川事業場のスマートコミュニティ化では、現在、玉川事業場および府中事業場で実施中の蓄電・充電統合システムなどの実証結果を踏まえ、2013年度から太陽光発電や地中熱などの再生可能エネルギーを含めたコミュニティレベルでのエネルギーマネジメントシステムの整備に着手するほか、その構築・運用ノウハウをソリューションとして提供する。

SCOPE3対応の促進では、今年度から部品メーカなどサプライチェーン企業における当社製品・サービスに関わるCO2排出量の把握や、ソフト・サービス領域での環境負荷削減活動などSCOPE3対応を強化する。

玉川事業場のスマートコミュニティ化

最後に、自社が直接的に排出したCO2のみならず、サプライチェーンによる製造・輸送などによるCO2排出量「SCOPE3」の削減を含めた取り組みにも着手すると発表。サプライチェーン上流での環境負荷把握を重点的に強化していくとのことだ。

SCOPE3を含めたCO2削減の取り組みの流れ