東北大学は、血管機能が複数の臓器・組織が連携してネットワークとして調節されていることを解明したと発表した。

成果は、東北大大学院 医学系研究科 循環器内科学分野の下川宏明教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、6月22日付けで米心臓協会の学会誌「Circulation Research」に掲載された。

血管は、主として、内側を覆う1層の「血管内皮細胞」と「血管平滑筋」から構成されている。血管内皮細胞は、動脈硬化の発生・進展を抑制する重要な働きを持つ。

下川教授らは、内皮機能が十分に働かず動脈硬化が自然に発生してしまう遺伝子改変を行った「内皮型NO合成酵素欠損マウス」を用いて研究が行われた。このマウスでは、動脈硬化のほかに、高血圧・高脂血症・糖尿病も自然に発症し、ヒトのメタボリックシンドロームに近い動物モデルとされている。

このマウスに正常マウスの骨髄を移植したところ、驚くことに、内皮機能(特に微小血管)が大きく回復し、高脂血症・糖尿病も改善した(血圧には影響なし)。

骨髄は血液細胞を作る働きがあるが、研究の結果、骨髄移植の効果は、血液細胞が正常になったことによるのではなく、脂肪細胞「アディポネクチン」から産生される善玉の因子が関与していることが明らかになったのである。それは、このマウスをアディポネクチン欠損マウスと交配してアディポネクチンが働かなくすると骨髄移植のよい効果が消失したことから判明した。

また、内皮機能の回復には、内皮型NO合成酵素とは別の神経型NO合成酵素の働きが代償的に亢進して惹起されていることも明らかになった。こちらは、神経型NO合成酵素欠損マウスと交配させても骨髄移植のよい効果が消失したためだ(画像)。

血管内皮―骨髄―脂肪細胞のネットワークによる血管機能調節

今回の研究の結果は、血管機能(特に微小血管)が骨髄や脂肪細胞も関与した大きなネットワーク機構により見事に調節されており、血流の維持だけではなく、脂質代謝・糖代謝が維持されていることを初めて示したもので、今後の研究の発展と新しい薬剤の開発に大きく道を拓くことが期待されると、研究グループは述べている。