スピッツァー宇宙望遠鏡は、宇宙で最初に存在した物体から発せられたほのかな光を過去最高の精度で検出した。

この薄暗い物体は複数あり、その正体は非常に巨大な星郡かもしれないし、複数のブラックホールの塊の可能性もある。あまりに距離が遠すぎるため、物体の一つひとつを区別して見ることは出来ないものの、スピッツァーは説得力のある新しい証拠を発見したと言える。

うしかい座の中の同じ領域を表した画像

スピッツァーがこれらの光を赤外線背景として初めて検知したのは2005年で、2007年にはより精度の高い検出を行っている。今回の発見はそれに続くものだ。このたびの観測で得られた証拠は、宇宙に最初に出現したこれらの物体が大きな質量を持ち、激しく燃焼していたことを確認する手助けとなる。これらの物体は非常に明るい光を放っていたと考えられている。

物体が放つ光が、私たちの住む銀河系ではなく、その近隣にある別の銀河からやってきている可能性を直ちに排除することはできない。しかしながら、この光は太古に存在したものであり、それを今、私たちが垣間見ているという可能性がますます強まってきている。スピッツァーに続くジェームズ・ウェッブ望遠鏡によって、これらの宇宙初の天体の正体とその位置が明らかになると思われる。

研究者が膨大な時間をかけて観測した画像から、すでに存在が確認されている星や銀河を排除したところ、赤外線背景の特性を持つかすかな光を発見した。この光の中にある塊を調べたところ、非常に離れた場所にある天体が寄り集まる様子と一致することが分かった。

研究者はこのたびの観測について、「ニューヨークの花火をロサンゼルスから探すようなもの」と例えている。ニューヨーク自体が放つ光も含めて、二つの都市の間にある光のすべてを取り除いてみたところで、目的としている花火が遠すぎるため、個別に判別することができないのと同じような状況だという。今回とらえた宇宙の光から分かることは、この光の発生源が核燃料を激しく燃焼した、ということだ。

ビッグバンの爆発によって宇宙が誕生したのは137億年前だ。その後、徐々に温度が下がり、5億年後には最初の星や銀河、ブラックホールが形成され始めた。「最初の光」はスピッツァーに到達するまでに、数十億年の旅をしたはずだと主張する天文学者もいる。その光について、当初は可視光、または紫外線の波長であったと考えられ、その後宇宙の拡張に従って、スピッツァーで観測された、より長い赤外線の波長に引き延ばされたと考えられる。

今後の研究では、赤外線背景を過去に検知されていた範囲よりもはるかに広い範囲で測定する。これまでの観測では範囲が狭く確証が得られなかったものを、より広い範囲で測定することによって確認するためだ。同様に、赤外線背景のより明確な証拠をつかむため、スピッツァーを使ってより多くの宇宙空間を観測し、太古の時代の光に隠された手がかりを探っていく。

スピッツァーの後継となる、ジェームズ・ウェッブ望遠鏡の稼働目的はここにある。スピッツァーは興味深い手がかりを与えてくれるが、ジェームズ・ウェッブ望遠鏡は、星が最初に燃焼した時代に、実際に何が起こったのかを教えてくれると考えられる。