東京大学と国立極地研究所など国内11の大学と8つの研究機関が参画して南極に建設を進めている「南極昭和基地大型大気レーダー計画(PANSY)」について、プロジェクトリーダーの東京大学大学院理学系研究科の佐藤薫教授らはこのほど、システム全体の4分の1の調整を終えて本格的な観測活動を開始し、事実上、“南極最大”の大型大気レーダーとなったことを公表した。今年11月に出発予定の第54次南極地域観測隊が、アンテナ約1,000本の全数を使用したレーダーシステムをフル稼働させるという。
大型大気レーダー(通称「PANSY(パンジー)レーダー」)は、南極・昭和基地近くの直径約160メートルの円形敷地に、高さ約3メートルの指向性アンテナを1,045本配置して構成される。地上1キロメートルから500キロメートルまでの高度領域での大気の乱流や風の鉛直成分を含む3成分などを、VHF帯の電波を使って1 分ごとに高分解能で観測する。
オゾンホールを形成させる「極成層圏雲」や大気の大循環をもたらす「大気重力波」などの観測により、温暖化など気候変動の予測精度の向上につなげていく狙いだ。
2000年にスタートした同計画は、第52次南極地域観測隊により建設が着手され、2011年3月に部分稼動して初期観測に成功したが、その後の記録的大雪によるアンテナ被害で観測を中断していた。第53次隊が同年12月から約1カ月半かけて高所へのアンテナ移設工事を行い、今年5月初めに全体システムの4分の1の調整を終え、対流圏と下部成層圏の観測を開始した。これにより、オーストラリア・デービス基地にある中型の大気レーダーを超えて、南極で稼動する最大の大気レーダーとなったという。
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