日本アイ・ビー・エムは6月15日、東京・豊洲に開設した「IBM東京ラボラトリー」の開所式を実施した。同社は2011年4月、大和事業所に構えていた国内における研究開発製造の主要拠点を豊洲事業所に移設し、「IBM東京ラボラトリー」として開設することを発表していた。
日本アイ・ビー・エム 代表取締役社長のマーティン・イェッター氏は、「これまでの日本での研究開発活動において、特筆すべき成果が3つある。1つ目は『Thinkpad』だ。PCにコンパクト、モビリティというコンセプトを持ち込んだThinkpadは働き方を改革した。2つ目は『アクセシビリティ』だ。アクセシビリティに貢献している日本人研究者に浅川智恵子がいるが、彼女は努力が認められて2011年には当社のフェローとなった。フェローは当社の技術者の最高職位であり、特別な地位だ。3つ目は『テキストマイニング』だ。データ分析に関わるこの技術は、データの重要性が高まっている現在、期待度は高い」と、日本の研究所が果たした功績をアピールした。
米IBM VP&Director of Researchのジョン・ケリー氏は、「当社は昨年に100周年を迎えたが、同時期に創立した企業のうち、すでに消滅してしまったところも少なくない。われわれが生き残ることができた理由はいくつかあるが、その1つは、創立当初から研究開発に力を入れてきたことだが、実際、特許もたくさん取得している。東京ラボラトリーは、IBMが世界に構える11の研究所の1つで、これらの研究所はネットワークで密に結ばれており、グローバルに与えるインパクトは大きい」と語った。
日本アイ・ビー・エム 執行役員 開発製造担当の久世和資氏は、東京ラボラトリーにおいて、どのようなことを手掛けていくかについて説明した。
同氏によると、大和研究所の事業の柱は「基礎研究」「ハードウェア製品開発」「ソフトウェア製品開発」「製造」「製品サービス」だったが、東京ラボラトリーでは「再利用を重視したSmarter Planetソリューションの開発」「世界のIBM R&D資産の活用」「企業、大学、政府機関との戦略的アライアンスや共同開発を加速」「新興国でのテクノロジー・リーダーシップ」を柱としていくという。
「これまでも製品開発を行ってきたが、これからは市場をドライブできる研究開発を目指したい。そのためのアプローチの1つが社会インフラにかかわるソリューションの開発だ。1つの研究所でできることには限界がある。これからは、大学や国など、さまざまな壁を越えた形でコラボレーションを行っていく必要がある。また、当社は2015年に向けて、新興国において技術面でのリーダーシップをとっていくことを目指しており、新興国で活用できるスキームを作っていきたい」
イェッター氏は開所式の後のインタビューで、研究所を移設した効果について、「これまでは、研究開発の過程で顧客とコラボレーションをする必要がなかったが、現在は、発明と市場とアプリケーションが一体となっており、顧客の近くにいることが重要。そうした観点からすると、東京のほうが顧客との距離が近い。また、人材を集めるという意味でも、東京のほうが機会が多い」と語った。