6月3日から9日まで京都で開催された「第25回ニュートリノ・宇宙物理国際会議」において、東京工業大学 理工学研究科・基礎物理学専攻の石塚正基助教により、ニュートリノ振動に関する国際的な実験である「ダブルショー(Double Chooz)実験」の最新成果が報告された。
ダブルショーは、日本とフランスのほか、ドイツ、イタリア、ロシア、アメリカ、ブラジルの研究者が参加する国際実験だ。日本グループは東工大のほか、東北大学、東京工業大学、首都大学東京、新潟大学、神戸大学、東北学院大学、広島工業大学が参加している。
ダブルショー実験は、「θ13」と呼ばれる3つの「ニュートリノ混合(振動)角」の、まだ上限のみしかわかっていない最後の1つを求める内容だ。
フランスのショー(Chooz)原子力発電所から発生する「反電子ニュートリノ」を、原子炉から400m(稼働予定)と約1km(現在稼働中)の2カ所においてまったく同一構造の測定器を用いてとらえ(画像1)、2つのデータを比較することで、ニュートリノ振動によるニュートリノ数の減少を精密に測定するというものである。
ダブルショー実験の最初の報告は2011年11月に行われ、前回の報告は2012年3月28日に発表された。最初の報告についての記事はコチラになり、ニュートリノやその振動現象についても触れているので、お読みいただきたい。
今回の成果は前回よりもデータ量をほぼ2倍にして解析方法も改良し、99.9%の確からしさで新しいニュートリノ振動の存在を確かめ(前回の発表では94%の確からしさ)、θ13をさらに精度よく測定することに成功したというわけだ。
そして今回求められた値は、0.109±0.039(前回は0.086±0.041(統計誤差)±0.030(系統誤差))。計算式は画像2の通り。また、画像3のグラフは、上段が原子炉ニュートリノのエネルギースペクトル。データ点は測定値、点線は振動がない場合で、実線は振動がある場合の最適値。中段は、データと振動がない場合の比。下段はデータと振動がない場合の差。
第25回ニュートリノ・宇宙物理国際会議では、日本の加速器実験「T2K」のほか、中国の「Daya Bay」実験や韓国の「RENO」実験といった原子炉ニュートリノ実験からもθ13の測定が報告され、すべて矛盾のない値が得られている。
この学術的意味は大きく、θ13が比較的大きかったため、今後「CP(電荷-パリティ)非保存の効果」の測定や、質量の順番の測定などの可能性があることを示した形である。