Silicon Laboratories(Silicon Labs)は6月7日、太陽熱発電インバータや電源のライン電圧モニタおよびデジタル絶縁に最適化されたAC電源モニタ用絶縁型AD/コンバータ(ADC)「Si890x」ファミリを発表した。
同製品は、独自のCMOSベースのデジタル絶縁技術とADC技術を用いたライン電圧モニタ/保護ソリューションで、太陽熱発電インバータやスイッチング電源や無停電電源、高電圧領域にセンサを伴う産業機器など、絶縁型データ収集が必要なパワー・マネージメント・アプリケーション向けに開発された。
絶縁型ADCは、AC電源から引き出す電力をモニタが必要なアプリケーションに必須のデバイスとなっているが、従来品は電流トランスにディスクリート部品とデータ・コンバータを組み合わせたもので、サイズが大きくなり、電源が複雑化している。また、ADC単体で使用するには、AC電源や高電圧システムに接続するため、アイソレータ(絶縁器)を外付けする必要もある。モータ制御専用の絶縁型ADCもあるが、AC電源モニタの市場には高価過ぎるという課題があった。
Si890xは、トランスを使ったソリューションに比べ、小型かつ薄型化化を実現。ADCと絶縁機能を集積しており、電力の測定値をシステム・コントローラで処理するため、絶縁されたシリアル・ポートを通じて送信することができる。Si890xファミリの絶縁定格には2.5/5kVがあり、IEC 60950-1/61010-1/60601-1規格およびUL/CSA/VDE認証といった、高電圧システムに対する安全要求を満している。
5kV品は、産業機器および医療機器、120V/220VのAC電源に対応するユニバーサル電源システムで使用可能。最大1200Vで使用でき60年以上の絶縁バリア寿命を実現した。Si890xのADC入力は、3チャネルのアナログ・マルチプレクサ(AMUX)を備えており、1個のSi890xで3種類の異なる信号(一般にAC電源電圧、電流、予備チャネル)をモニタすることができる。
Si890xでは、評価キットとして「Si890xPWR-KIT」が用意されている。オシロスコープでの波形観察やシリアル・データの受信が可能なマスタ・コントローラを含んでおり、AC電源ラインに簡単かつすぐに接続して評価が可能。
シリアル・インタフェースは、UART/I2C/SPIの3種類から選択できる。これにより、既存の通信ポートを使ってシステム設計に簡単に統合することができる。SPIポートは、高帯域幅のアプリケーションのために最大2.5Mbpsのデータ・スループットを実現した。
なお、パッケージは16ピンSO。価格は1万個時で1.65ドルから。評価キット「Si890xPWR-KIT」も供給中で、価格は149.00ドル。すでに量産出荷を開始している。評価キットではデモおよびACライン電圧(50/60Hzの110/220VAC)とACライン電流を測定できる。