5月17日と18日の2日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催された「富士通フォーラム 2012」。同会場の会議棟では、両日ともさまざまなセッション/セミナーが繰り広げられた。

富士通フォーラム2012の様子

初日の基調講演では代表取締役社長の山本正已氏が同社のビジョンを語った

展示会場のクラウド・コンピューティングブースも注目を集めた

17日午後のセッションには、富士通のプラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部でシニアディレクターを務める荒木純隆氏が登壇。「今求められるストレージの選択基準~大容量データ/事業継続/クラウドへ対応するために~」と題した講演では、3大テーマに対してストレージシステム「ETERNUS(エターナス)」がもたらす解が示された。

BCPの推進においてカギを握るストレージ

2011年3月11日に発生した東日本大震災での教訓、BCM(事業継続マネジメント)国際規格の制定(ISO22301)などを背景に、国内の多くの企業でBCM/BCP(事業継続計画)への関心が高まっている。富士通フォーラム 2012のセッションに登壇した荒木氏は冒頭、富士通およびグループ企業におけるBCP体制とこれまでの活動を富士通アイソテックの事例として紹介した。

富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部 シニアディレクターの荒木純隆氏

それによると富士通アイソテックは、工場の被災時には製造を島根富士通工場に切り替えるといった方針が盛り込まれたBCPを2007年に策定。以降、総合訓練、モックディザスタ(災害模擬訓練)、机上読み合わせ訓練といった各種の訓練を継続的に実施しており、2008年度から2010年度までの訓練回数は40回以上に及ぶという。

荒木氏は、東日本大震災の時の同社における災害復旧行動記録を分析した結果を示した。同氏によれば、震災発生直後から非常時体制に切り替える判断を下すまでに要した時間と、業務再開までに要した時間について、もし事前にBCPを策定していなければ、それぞれ24時間、18日間の遅れが生じていた計算になるという。同氏は次のように説明した。「災害発生を受けての判断をいかに迅速に行うかと、業務体制をいかに早く切り替えられるか。BCPを事前に定めたうえで、日々しかるべき訓練を行うことで、これらにかかる時間は大幅に短縮される」

こうしたBCPの下、今日の企業経営そのものとも言える業務データを保全するにあたっては、ストレージがきわめて重要な役割を果たすことは明らかだ。荒木氏は「ハードウェアやアプリケーションはコストをかければいつでも調達可能だが、一度失ったデータは絶対に取り戻すことはできない。データを保有するストレージの運用を最優先に考える必要がある」と述べた後、ETERNUSに備わるバックアップ/災害対策機能を紹介した。

バックアップに関しては、「ETERNUS LT series」を用いて複数のサーバのバックアップ統合や、「ETERNUS CS800 S3 デデュープアプライアンス」に備わる重複排除・圧縮機能が実現するデータ保管および転送コストを抑えた遠隔バックアップ、NAS製品の「NR1000F series」やSAN対応ディスクアレイ「ETERNUS DX series」による仮想化環境でのオンラインバックアップの3つについて、それぞれの仕組みが説明された。

荒木氏は、「データの確実な保全にあたっては、目標復旧レベル(RLO)、目標復旧時点(RPO)、目標復旧時間(RTO)の「3つのR」について、業務ごとの優先度やSLA、コストに応じて最適なバックアップ/リカバリ手法を選ぶことになる」と述べ、ETERNUSでは、製品と技術の組み合わせによって、企業や業務ごとのニーズに応えていくことができると語った。

クラウド環境で威力を発揮するストレージ自律制御技術

2つ目のテーマであるクラウドの説明の冒頭、荒木氏は、クラウドの採用から高度な活用に至るまでに企業がたどる4つのステップを示した。

これは、ITインフラの"仮想化"によるリソースの効率利用から始まり、リソースをプール化して扱えるようにする"標準化"、プロビジョニングを可能にする"自動化"を推し進めて、最終的には自律制御技術を活用したセルフサービス・ポータルによる"サービス化"を実現するというものだ。なお、自律制御とは自己構成(Self Configuration)、自己最適化(Self Optimization)、自己回復(Self Mitigation)、自己防衛(Self Protection)の4側面からなり、富士通が長年にわたって研究開発に取り組んでいる技術分野である。

「企業内でクラウドの利用が進むと、従来、個別に運用されてきた各業務システムのインフラは統合化へと向かう。その際には、これまでのようにSEが手作業でインフラの設計や性能面でのチューニングなどを行うことが困難になるため、それらの作業を自動で行ってくれる仕組みがストレージにも必要になる」と荒木氏。そうした状況下で企業からの注目度が年々増している技術としてストレージ自動階層制御技術を挙げた。

利用状況に応じてデータを最適なドライブに自動的に再配置するストレージ自動階層制御は、上述した自律制御技術の流れを汲む技術であり、富士通の製品ではストレージ統合管理ソフト「ETERNUS SF Storage Cruiser」が実際の仕組みを提供する。セッションでは、同ソフトとSAN対応ディスクアレイ「ETERNUS DX S2」の組み合わせで、最も高速なSSD、高速なオンラインディスク、大容量で安価なニアラインディスクの3層間でデータの自動移動・配置がなされるさまが説明された。

「この自律制御技術を活用することで、企業はデータ保管コストを抑えながら、ストレージシステムの全体的な性能を高めることが可能になる」(荒木氏)

一方、デバイスの増設でストレージ容量を容易に拡張できるスケールアウト・ストレージの用途を担う製品として、2012年5月にリリースされたばかりの「ETERNUS VX700 sereis」が紹介された。全ノードを1台のストレージとして管理可能な同製品は、仮想化環境のストレージ・プールとして運用するのに最適なソリューションと言える。

また、シマンテックの「Symantec FileStore」ソフトとディスクアレイ「ETERNUS DX series」および「PRIMERGY」サーバによる、スケールアウト型ファイルサーバのソリューションも提供されている。

ビッグデータ時代にストレージに求められる能力とは

セッションの最後には、昨今話題の上ることが多いビッグデータに関する富士通の考え方や取り組みが説明された。同社が全体的な戦略として掲げるビジョンは「Human Centric Intelligent Society」と呼ばれる。同ビジョンは、データセンシング、分析/予測・結果シミュレーション、ナビゲーションといったビッグデータの収集・管理・分析・活用に必要な技術を含む各種のICTを活用することで豊かでスマートな社会を実現していくというものだ。

「クラウドやビッグデータがもたらす本当の価値とは、予算や技術的な限界などから従来できなかったことを可能にして、経営・ビジネスの向上につなげていくこと。富士通は、顧客企業のそうした取り組みを支援するプラットフォームやソリューションを幅広い選択肢として用意している」と荒木氏は述べ、ハイエンドでの取り組みとして、理化学研究所との共同開発による次世代スーパーコンピュータ「京」(ストレージに「ETERNUS DX80」を採用)を挙げた。

続けて同氏は、NTTデータとの共同開発でETERNUSへのアクセス方法を拡張し、Hadoopプラットフォームにおける書き込み性能を向上させる仕組みや、業界標準のSPCベンチマークでエントリー/ミッドレンジクラスの最高性能を達成した「ETERNUS DX S2」を紹介し、大量データの高速処理が求められるこの分野におけるETERNUSシリーズの優位性をアピールした。

ストレージに要求される能力がこの数年で大きく変化している。荒木氏は「扱うデータの種類が多様化して、それぞれに最適なストレージ・アーキテクチャを導入する必要があることと、仮想化やクラウドの進展でデータの移動や管理が柔軟に行えるようになったのに伴って、データ・セントリックな業務が今後さらに増えていくこと。企業のIT部門は、特にこの2つに留意して自社のストレージ戦略を定める必要がある」と述べて講演を締めくくった。

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