富士通研究所は、テレビやデジタルサイネージの映像の中に、人間の目にはわからない通信情報を埋め込み、その映像を携帯電話やスマートフォンなどのカメラで読み取ることで、通信する技術を新たに開発したと発表した。これにより、視聴者がテレビ画面を携帯電話で撮影するだけで、CMに関連したクーポンやサイトのURLなどの情報を取得することができる。

テレビCM等の映像を携帯で撮影すると・・・

映像内に埋め込まれた情報を読み取り・・・

クーポン情報を取得し表示する

これまで、携帯電話等と通信する技術には、可視光通信、電子透かし、無線LAN、QRコードなどがあった。

同研究所によれば、可視光通信では光の点滅で、0もしくは1の情報を送信する技術だが、1秒間に100万回という高速な点滅を受信するためには特殊な受信装置が必要であるうえ、無線LANは認証設定が複雑であるため、導入にはある程度の専門知識が必要という問題があるという。また、電子透かしやQRコードは、元映像に変更を加える必要があり、画像を劣化される欠点があるという。

同研究所が今回開発した技術は、映像の中に微小な灯りを埋め込み、その灯りの数を増減することにより映像の明暗を緩やかに発生させ、情報を送信するというもの。1つ1つの灯りの明るさは人間の目には認識できない程度(1秒間に7.5回の点滅)で、映像内の灯りの数を変更することで、画像全体の明るさを変更して情報を送信する。

通信には明暗のタイミングの異なる2種類の波を用意し、波の一方が「0」、もう一方が「1」を表し、送りたい情報に応じて切り替えながら発信し、2種類の波が発信されている順番を判定することで情報を読み取る。1秒間で16bitの情報を送ることができ、2~3秒程度の撮影で情報の受信が可能だという。

今回開発した技術

人間は画像の一部が急激に変化した場合はすぐに気がつくが、徐々に時間をかけて変化をさせた場合は気がつきにくいため、灯り数は少数からはじめ、徐々に画面全体に広げて映像の変化を感じにくくしているという。

携帯のアプリでは、映像とデータの波を分離してから情報を復元する。携帯側には特別なカメラは必要ないという(記者発表ではQVGAで撮影して実験)

記者発表でのデモ。テレビとの距離は2m程度までなら認識可能だという

ただし、送信するのは実際の情報ではなく識別コードで、このコードをサーバ上で実際にクーポン情報等に変換し、3G回線など別のルートで送信する。

同社では、この技術により、自社ホームページURLへの誘導、クーポンによる集客、CM効果の測定、イベントに連動した新サービスなどを実現でき、今後は、テレビ映像から携帯電話へ配信する通信速度を改善し、2013年度中の実用化を目指す。

サービスのしくみ。富士通では、映像に情報を埋め込むプラットフォームやサービスを提供する予定