三菱化学とパイオニアは6月4日、発光層を塗布プロセスで成膜した有機EL素子の開発に成功し、量産技術の確立に向けた検証設備を設置すると発表した。

現在、有機EL照明パネルの製造では、蒸着による成膜が一般的であり、発光性能を上げるため、発光層を複層化するマルチユニットなど、複雑な構造を採用している。しかし、面積が広く、欠陥の少ない均一発光面のパネルを低コストで量産するためには、塗布による成膜の方が優れていると考えられている。中でも、有機EL照明パネルの性能に大きく影響し、材料費が高額な発光層を塗布プロセスで成膜することが強く求められていたが、照明用途に用いるのに十分な性能が得られなかった。

そこで、三菱化学とその研究開発子会社である三菱化学科学技術研究センターおよびパイオニアは、2010年1月より、塗布成膜プロセスによるシンプルなシングルユニット構造を採用した白色型およびフルカラー調色型有機EL照明パネルの開発を進めてきた。今回、三菱化学が開発した塗布成膜プロセス用の独自の発光材料を用い、両社が共同で素子設計および塗布成膜プロセスを最適化することで、照明として実用レベルの長寿命と高効率化を達成した。

スペックは、白色輝度1000cd/m2の輝度70%減寿命が白色型で5万7000時間。発光効率においては、フルカラー調色型が輝度2000cd/m2で56lm/Wを実現した。

この成果を踏まえ、三菱化学とパイオニアは、塗布成膜プロセスによるシングルユニット発光層の有機EL照明パネルの量産技術の確立に向けて、検証設備の設置を決定した。同設備は、30cm×40cmのガラス基板サイズに対応し、塗布成膜プロセスによる有機EL照明パネルの試作と性能評価が可能。量産技術の開発と検証を目的としている。2012年夏からの稼働に向け、パイオニアの100%子会社である東北パイオニアの米沢事業所内に設置する予定。

なお、三菱化学とパイオニアでは、2014年度までの有機EL照明の本格事業化に向け、早期の量産技術確立を目指すとしている。