Freescale Semiconductorの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは5月31日、日本の組込市場に向けた戦略として、T-Engine ForumのExecutive Board Member(幹事会員)に就任したことを明らかにした。

同社が進めるエコシステム構築の一環としての取り組みであり、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン代表取締役社長のディビッド M.ユーゼ氏は、「必要とされるソリューションをパートナーを通じて提供していく必要性を感じており、その対応のためには日本のソフトウェアパートナーの拡大が重要」ということで、日本市場ではTRONの比率が高いことから、T-Engine Forumにエグゼクティブメンバーとして加入することを決定したとのことで、これにより、「海外でもFreescaleの顧客にTRONを選択肢の1つとして提供していけるようになる」とする。

また、T-Engine Forumの代表として参加した東京大学大学院 情報学環の坂村健 教授は、「世界的な動きとしてエコシステムをどうやって世界規模で構築していくかが重要になってきている。そうなると従来のような囲い込みによるビジネスは通用せず、インフラを含めてオープンな基準のものが必要となる」とし、チップアーキテクチャに非依存で、オープン系として30年以上の活動実績があるTRONが存在感を出せるとした。

「組み込み開発でもオープン系の案件が拡大している。その中心はLinuxだが、我々はオープン系の元祖という自負がある。RTOSなので若干分野は異なるが、今後の社会のクラウド化にはRTOSこそが重要になる」としており、この背景として、通信分野の技術革新を上げた。主にネットワークの高速化と常時接続の進展が理由だ。WANが3Gから4Gへと進展しつつあるが、「よくデータの転送速度が速くなると認識されるが、それは当然で、重要なのは遅延が減るという点」(同)という。例えば、LTEではRound Trip Timeが150msから5ms以下に、アイドルから接続モードへの遅延も50ms以下になると言われている。

このようなネットワークのリアルタイム化が進むと、組込端末がクラウドネットワーク端末となる。そうすると、例えばモーター処理などもクラウド側で行って、リアルタイムでクライアント側でその結果を受け取り、実際の動作に反映させることが可能になる、いわゆる「ユビキタス機能分散システム」が実現されることとなる。これにより「OSやCPUに依存することなく最適な処理を最適な機器で行う機能分散世界が実現されることとなる」とのことで、特に民生向けのリアルタイム・テレメトリは新しいビジネス分野として期待ができ、そうした意味ではRTOSと、それを推進するFreescaleが強みを出せるようになるとした。

記念撮影に応じるディビット M.ユーゼ社長(左)と坂村健 教授(右)