CEVAは5月24日、都内で会見を開き、同社の現状や同社が主力として提供するDSP IPコアの新製品などに関する説明を行った。
同社の事業概要として2012年度は6020万ドルの売り上げ、顧客数も200社、ライセンス実績も300種類に達し、出荷数量も単年で10億個へと到達したという。また、日本市場でも、15社に対し25種類以上のIPを提供しており、その適用アプリケーションもオーディオ、ビデオ、ベースバンド、Bluetoothなど幅広いものとなっている。
日本シーバ代表取締役社長の日比野一敬氏 |
DSPはプロセスパワーの増大とプロセスシュリンクに併せた小型化が進んできたが、「なんでもできる汎用DSPは、なんにもできないDSPとなりつつある」(日本法人の日本シーバ 代表取締役社長の日比野一敬氏)と、システムの要求がより特化したものへと移り変わってきていることを指摘、「ベースバンド」「オーディオ/ボイス」「イメージング/ビジョン」の3つの分野に向けた専用DSPのIPを提供していくことで市場ニーズへの対応を強化していくとした。
また、日本市場の顧客向けには3つの価値を提案することで採用活動を進めて行くとする。1つ目は「オーディオの前処理・後処理の精度を高める」というもの。ノイズキャンセリングやビームフォーミング、バーチャル3Dサウンドなどがこうした機能として対応が求められているという。2つ目は「ソフト処理によるイメージ・ビジョンの市場を創造」というもの。汎用DSPではイメージ/ビジョン処理はパフォーマンスが足りなくなってきており、ARや超解像、顔・動き認識、ソフトウェア手振れ補正、CVなどの分野に向けて専用DSPを提供することで対応を進めて行くという。そして3つ目は、「SDR(ソフト無線)のトータルソリューションを提供」というもの。LTA/LTE-Aの基地局や、デジタルTV用デモジュレータ、Wi-Fi、GPS、Bluetooth、スマートグリッド、IEEE802.22などのホワイトスペース、業務用無線といった無線領域での活用に向けて注力していくとした。
一方の製品の展開としては、オーディオ/ボイス市場は、サラウンドシステムの多チャンネル化(11.1chや14.1ch)、機器の薄型化・小型化によるスピーカー音質の劣化などに対する通話/視聴時の品質の向上が求められるようになってきている。また、AppleのSiriに代表されるような音声認識の精度向上など、音声に対する要求もまだまだ根強く残っている。そこで同社が提供する次世代DSPが「TeakLite-4」だ。
それぞれの市場に併せた「TL410」「TL420」「TL411」「TL421」の4つのコアを用意しており、それぞれソフトウェアによる互換性の確保がなされており、最大でクワッド32×32ビットMACを1.5GHz(28nm HPMプロセス)で動作可能な第2世代32ビットオーディオDSPで、前世代のTeakLite-III比で30%以上の低消費電力化とTeakLite-III比で25%以上小型化となる10万ゲート以下の回路規模を実現しているという。このため、例えばmp3のデコードでは、0.23mW@40nm LPの消費電力を実現できるようになると同社では説明している。
また、ビジョン/イメージング市場では、ほぼ何らかのARMコアが用いられるようになり、GPUに関してもMaliやNVIDIA製のものなど差別化が難しくなってきている。また、どのアプリケーションチップを用いても、OSも同じで差別化要因が見えづらくなっている。その中での方向性としては、ソフトウェアによるインタフェースなどでの差別化か、自社デザインによるSoCなどの設計・製造のハードウェア的アプローチのいずれかである。
そうした中、マシンビジョンなどのコンピュータビジョンなどを活用したエンベデッドビジョン市場が立ち上がりつつあり、例えば車載カメラやデジタルサイネージでの人物検知などで実際に活用されるようになってきた。そうした分野に向けて同社が提供するのが「CEVA-MM3101」だ。
同製品は、スマートフォンやタブレット、スマートTVなど向けDSPで、28nmプロセスでは1mm角以内のダイサイズでメモリを含めて実現することができる。また、消費電力については、Cortex-A9と同等性能時で1/10~1/20以下を実現することが可能だという。同社としてはDSPのIPコアだけでなく、画像処理用のライブラリやOpenCVなどのライブラリのほか、アプリケーションとしての超解像や顔認識、指トラッキングなどをパッケージソリューションとして提供することで、採用の強化を図っていきたいとしている。
そしてベースバンド市場では、「Internet of Thigs(IoT)」というすべての機器がネットワークに接続されるという話題があちこちで話されるようになってきている。既存のLTEや3Gなどでこの接続数を賄えるかというと、すでにトラフィックの増大に四苦八苦している通信キャリアが対応することは難しく、その対応策としてWi-Fiの活用が期待されており、その先の接続としての3GやLTE、WiMAXなどという構成が考えられ、ベースバンドにはさまざまな通信規格への対応が求められることとなるというのが同社の見る通信の将来像であり、そこで必要となるのがユニバーサルモデムエンジンだという。
ユニバーサルモデムエンジンとしては、さまざまな規格に対応可能な高いパフォーマンスを実現しつつ、タイムリーに市場投入可能な拡張性/柔軟性と開発環境、そして低消費電力の実現とモデムの信号精度の確保が求められることとなり、同社の「CEVA-XC4000」はそうした課題の解決を目指して開発されたDSPとなっている。
同製品は、CEVA-XCシリーズの第3世代にあたる製品で、1つのファミリに4つのプロセッサコンビネーションを用意。これにより、必要とするアプリケーションに最適な構成を実現することが可能となっており、例えばLTEとWi-Fi、GPSとデジタルTVのデモジュレータを同時に活用することなどもできるようになるという。
また、すでにLTE-Advacedに対応したリファレンスも用意しており、それをIPとして活用することも可能だとするほか、IEEE802.11acに対応したリファレンスデザインなども提供しているという。
LTE-Advanced向けリファレンスブロックダイヤグラム(左)とWi-Fi IEEE802.11ac向けリファレンスぷろっくダイヤグラム(右)。いずれも性能に関してはTMSCのプロセスを用いたテストチップによるもの |
なお、同社では今後もDSPのIPコアの開発を進めることで、カスタマの市場シェア拡大などのサポートを行っていくとするほか、今回発表を行ったような新たなDSPを、それぞれの分野に提供していくことで、新たなニーズへの対応、日本では特にオーディオ/ボイス分野を中心としてビジネスを加速して行きたいとした。