5月17日と18日の2日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催された「富士通フォーラム 2012」。その展示会場にはセッションやセミナーと同様、多くの企業ユーザーが詰めかけた。
富士通のクラウド・コンピューティングを紹介するブースでは、「仮想環境におけるデータ保管の最適化」をテーマに最新機種に備わる特徴や機能が実演紹介された。ここでは、SAN対応ディスクアレイ「ETERNUS DX440 S2」とストレージ統合管理ソフト「ETERNUS SF Storage Cruiser」の組み合わせによって提供される、ストレージ自動階層制御テクノロジーのデモンストレーションの様子を紹介する。
※ 自動階層制御の概要を紹介する動画も用意してあります。ぜひそちらもご覧ください。
今日のストレージに強く求められる、ビジネス環境変化への対応
企業で扱うデータ量が爆発的な増大を続ける中、単にバックアップを行うだけでなく、長期間にわたっての保存が必要なデータが年々増加している。そのようなデータは一般に、生成・格納されてから一定期間が経過するとユーザーからのアクセス頻度が急激に低下していくため、常時使われるオンラインストレージに格納したままでは、ストレージの管理作業や運用コストの面で大きな非効率が生じてしまう。
アクセス頻度の違いが生むこうした非効率は、ビジネスユーザーが日々対峙する商品の売上データを格納・管理するストレージにおいても生じている。昨今の目まぐるしいビジネス環境の変化の中で、事業部門は、どの店舗で/何が/どのぐらい売れているのかといった情報の中でも、現在"旬"とされる商品の情報をいち早く抽出したいという強いニーズを持っている。そのため、今日のストレージは、ビジネスユーザーがその時点で最も必要としているデータを迅速に取り出せるような環境であることが強く求められている。
こうしたニーズを満たすには、オンラインディスクから長期保存を要するデータや旬を過ぎたデータを、時期を見計らいながらニアラインディスクもしくはバックアップストレージに移動する作業を行うことになるが、この作業がIT部門にとって労力的にもコスト的にも大きな負担となることは明らかだ。特に、各店舗から日々送られてくる膨大な売上データについては、人手に頼った作業では到底追いつかず、手を打たずにいると管理が破綻してしまうことになる。
データのライフサイクルに着目したストレージ自動階層制御テクノロジー
そこで、一連の問題を抜本的に解決するテクノロジーとして近年とみに注目が高まっているのがストレージ自動階層制御である。
富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部の鎌倉早苗氏 |
これは、常にアプリケーションからのアクセス頻度が高いデータや、あるいは季節商品に関する情報など、時期によってニーズが急上昇するようなタイプのデータを高性能なSSD(Solid State Drive)に配置し、一方でアクセス頻度が低いデータを、大容量で安価なニアラインSAS(Serial Attached SCSI)ディスクに配置するといった、データのライフサイクルに応じた階層管理を自動で行ってくれる技術である。この仕組みを自社のストレージシステムに実装することで、IT部門は、アクセス頻度の高いデータへのアクセスにおいてレスポンス時間を短縮し、アクセス頻度の低いデータへのアクセスにおいて運用管理コストを削減することが可能になる。
富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部の鎌倉早苗氏は、同機能がもたらすメリットを次のように説明する。
「業務で扱うさまざまなタイプのデータを、ディスクの価格、処理性能、管理コストに応じて最もふさわしいディスクへと自動的に配置・移動してくれるこの機能を利用することで、IT部門は作業労力とコストを共に大幅に抑えながら、お客様のビジネスにとって、常に最適なストレージ環境が提供できるようになります」
Oracle Databaseのバックアップを想定した環境で
ストレージ自動階層制御の仕組みを実演
富士通フォーラム 2012展示会場のETERNUSブースでは、SAN対応ディスクアレイ「ETERNUS DX440 S2」とストレージ統合管理ソフト「ETERNUS SF Storage Cruiser」を中核とするデモシステム環境上でこの機能が実演紹介された。
このデモシステム環境を構成するコンポーネントは、上記の2製品に加えて、UNIXサーバの「SPARC Enterprise M3000」、重複排除(デデュープ)・圧縮機能を担うもう1つのストレージとして「ETERNUS CS800 S3 デデュープアプライアンス」、富士通の高速バックアップ・レプリケーションを提供するソフト「ETERNUS SF AdvancedCopy Manager」、FCoEに対応するコンバージドスイッチ「Brocade VDX6730-32」となっており、これらすべてが1ラックに収められた状態で稼働していた。
「このデモシステムでは、SPARC Enterpriseサーバ内のOracle Solarisコンテナ上に構築されたOracle Databaseの高速バックアップと、Oracle DB標準のOracle Recovery Manager(RMAN)を用いたバックアップ運用という2つの用途を想定しています」(鎌倉氏)
ここで、デモシステムでストレージ自動階層制御がなされる仕組みを説明しよう。
ETERNUS DX440 S2のエンクロージャーには、メインの階層型ストレージとして、用途とアクセス頻度に応じて異なる3タイプのディスク群が搭載されている。
Oracle Databaseのインデックスなど、最も高速なレスポンスを必要とする用途のためにSSDディスク2台を用意。また、頻繁にアクセス要求がなされるユーザーデータのような、高価なSSDを採用するほどではないが相当のレスポンスが求められる用途のために高性能なオンラインSASディスク4台が設置され、さらに数か月前のデータなど、利用頻度の低いデータ向けに6台の低価格・大容量のニアラインSASディスクで運用するという構成だ。
自動階層制御の詳細はこちらの動画でご覧いただけます。
※ YouTubeでは、ETERNUSの機能紹介動画をそのほかにもご用意しております。そちらもぜひご覧ください。
上述の異種ディスク構成の下、実際に自動階層制御機能を提供するのはETERNUS SF Storage Cruiserである。同ソフトは、異種ディスクで構成されるディスクプールへのすべてのデータアクセスを監視してアクセス頻度を検出し、IT部門があらかじめ設定した運用ポリシーに沿って、ドライブ間で自動的にデータの移動・再配置を行う。
「ETERNUS SF Storage Cruiserでは、データの移動・再配置を行うための運用ポリシーを、ユーザーごとの要件に応じて、柔軟に設定することが可能です。また、再配置がなされた際にも、サーバ側での設定変更は一切不要となります。こうして、IT部門は運用管理の工数を大幅に削減できるようになります」(鎌倉氏)
ストレージ自動階層制御が企業にもたらす効果は、データ自体の管理に要する労力/コストの削減にとどまらない。最後に鎌倉氏は、富士通が行った、SSD、オンラインディスクとニアラインディスクを混成した環境と、オンラインディスクのみで構成した場合との比較を示した(両者とも総容量100TBの同等環境)。その結果は、前者の環境は後者の環境に比べて、性能が求められるデータについては約2倍のアクセス性能を提供しつつ、ストレージの設置スペースで約50%減、消費電力量で約60%減となっている。
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以上、データのアクセス特性やユーザーの運用ニーズごとに異なるデータアクセスが行われるストレージにおいて、記憶媒体の価格や性能に応じて全体の処理性能とデータ保管コストの最適化を図るストレージ自動階層制御テクノロジーについて紹介した。なお、フォーラムの当ブースでは、もう1つのデータ保管の最適化アプローチである重複排除・圧縮テクノロジーのデモも行われた。その詳細は、5月30日公開予定のレポートで紹介する。
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