5月9日~11日、東京都江東区の東京ビッグサイトにて「スマートフォン&モバイル EXPO」(リードエグゼクティブ ジャパン主催)が開催された。会場は全日大盛況。ハードウェアからアプリケーションまでさまざまな製品が展示され、来場者の関心を誘っていた。

スマートフォン&モバイル EXPOの様子。情報セキュリティEXPOなど、11の展示会が併催され、連日大盛況だった。

本稿ではその「スマートフォン&モバイル EXPO」に出展されたブースの中から、B2Bアプリ開発の分野で特徴的な事業を展開していたアイ・エンターにフォーカスし、内容を簡単にご紹介しよう。

アイ・エンターのブース

スマホ開発で実績! 契機はリーマン・ショック

アイ・エンターは、もともと基幹系システム、ECサイトやソーシャルアプリの開発を行ってきた企業だが、4年ほど前よりスマートフォンアプリ開発へのシフトを進めている。きっかけは2008年のリーマン・ショック。それ以前は基幹系システムの開発がメインだったが、「景気の影響を受けやすい」(アイ・エンター 代表取締役の入江恭広氏)と感じ、スマートフォンの強化を決意したという。

アイ・エンター 代表取締役の入江恭広氏

スマートフォンビジネスの最大のメリットは、「大手企業とも直接取引できるようになる」と入江氏は明かす。スマートフォンビジネスの伸長に伴い、「挑戦できるフィールドが広がった」(入江氏)というのが大きな理由だ。これまで、名も知られていない中小企業が大手に提案しても取引してくれなかったが、スマートフォンの実績を示すと大手も取引してくれる状況にあり、「これまでと全く違う」(入江氏)と指摘する。

また、同じアプリでも言語設定を変えるだけで海外でリリースできる点も、スマートフォンビジネスの大きなポイントの1つだ。iOSもAndroid OSも、プラットフォームとして世界共通であり、その上で動作するアプリはどの国でも動くため、「どんどん世界に対して発信していけるようになりたい」(入江氏)と目標を語る。

営業力も提供する「スマートフォン研究会」

こうして培った開発力をベースに、アイ・エンターでは「スマートフォン研究会」という組織も設立している。

これは、アイ・エンターらで抱えるスマートフォンビジネスのノウハウを中小企業の会員に提供するというもの。会員社にスマートフォンビジネスの「メーカー」としての力をつけてもらい、ビジネス力を高めてもらおうというねらいがある。

現在は30社が会員となっており、「スキル・ナレッジを向上させていって、世界一、日本一のアプリメーカーになろうというコンセプト」(入江氏)で、研究会や研修、交流会など、さまざまなプログラムを提供している。

もっとも、これだけであれば一般的な研究会/コミュニティと大差はない。しかし、スマートフォン研究会には"ビジネス力"を意識したサービスがあり、それが大きな特徴となっている。

そのサービスとは"営業力"の提供だ。アイ・エンターには現在、営業部隊が10人以上いるが、「中小の開発会社ではこうした営業がいなかったり、数が少なかったりする場合も多い」(入江氏)という。そこで、研究会のメンバーがメーカーとしてアプリやサービスを作り上げた際に、これを会員社全体で協力して販売していくスキームを構築している。

さらにスマートフォン研究会では、販売代理店の募集も行っており、全国の販売網を作り上げようとしている。この販売網が拡充されれば、地方の開発会社にとっては、代理店を通じて全国へとアプリの販売を広げられるようになり、地方の代理店にとっては、スマートフォンアプリやサービスを作れるメーカーが地場にいなくても、製品を販売できるというメリットが得られるようになる。

例えば、アイ・エンターが開発するiPadを使った受付システム「I-FACE」は、受付に設置したiPadの画面にタッチして呼び出しが行えるビジネスアプリケーションである。iPadのカメラによる来訪者の確認や、既存PBXやビジネスフォンへの接続、コンセント不要の無線LAN接続ができるほか、内線番号での呼び出しを社内のスマートフォンにつなげられるといった機能も備えている。

非常に多機能なアプリケーションではあるが、同社の感覚からすると「年間100社に売れればよく売れた方」(入江氏)というのが実情だという。こうした状況を打開すべく、営業力を結集し、提案できる顧客の数が広げていこうというのがスマートフォン研究会のねらいだ。I-FACEも世の中のニーズを考えれば、「4000社程度の導入も難しい話ではない」(入江氏)はずだ。

展示されていた「I-FACE」

中小開発会社の理想郷

研究会を成功に導くうえでは何が必要か。

入江氏は、「1つの会社の力だけではなく、いかにパートナーシップを結ぶか」が重要と語る。まずはアイ・エンターだけでなく、会員社にも提案できるようにしていきたい考えだ。また、今後は「研究会として海外の製品を取り入れたり、会員社の製品を海外向けにローカライズしたりといったこともやっていきたい」と入江氏は言う。

こうした取組を通じて、単発で1回ごとに売り切っていくやり方よりも継続的に売り上げていけるシステムを構築していくことも目標だ。例えば同社の企業向けオンラインストレージサービス「絆BOX」は、30GB版で月額4980円と 低額だが、導入する企業が増えれば、収益は大きくなる。

「(リーマン・ショックのような)不景気になっても、こうした低価格の商材は、一気に売上がなくなるのではなく、ゆるやかに下がっていく」と入江氏。そのため、これがベースとなって、次の事業を展開できる余力となる。

アイ・エンターでは、電子カタログサイトを構築して代理店向けの販売サポートも行っている。電子カタログサイトには同社の製品や会員社の製品が登録されるので、代理店はこれをカスタマイズして営業ツールとして利用できる。この仕組みが活用されれば、メーカーは製品を登録するだけで各地で販売されるようになり、代理店も自動的に販売商品点数を増やせるようになる。

「Win-Winのモデルを作っていきたい」と意気込む入江氏。中小企業の理想的なビジネス環境の構築に向け、代理店、会員社の拡大に注力していく。