物質・材料研究機構(NIMS)は、空気中の物質を感知して発光する有機/金属ハイブリッドポリマー材料を開発したと発表した。

成果は、JST戦略的創造研究推進事業CRESTの「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製」領域の研究課題「エレクトロクロミック型カラー電子ペーパー」の一環として得られたもので、先端的共通技術部門 高分子材料ユニット 電子機能材料グループの樋口昌芳グループリーダー、佐藤敬博士研究員の研究によるもの。詳細は、英国王立化学会の速報誌「Chemical Communications」に5月21日付けで掲載された。

熱や電気などの外部刺激を感じて光る材料は、視覚的なヒューマンインタフェース性に優れた発光センサや表示素子としての利用が大いに期待され、実用化が始まっているものもある。例えば、電圧を加えると発光する材料は、有機ELディスプレイとしてすでに商品化されている。一方、物質の蒸気(Vapor)を感知して光る(Luminescence)物質は、ベイポルミネセンス(Vapo-Luminescence)物質と呼ばれるが、報告例は少なく、また表示素子など実用を見据えた研究もされてこなかった。

今回の研究では、有機/金属ハイブリッドポリマー材料の開発とともに、これをフィルム化して酸性やアルカリ性の気体を検知できる発光性ポリマーフィルムを実現。同材料は、希土類金属イオンであるユウロピウムイオンと有機分子が数珠つなぎになった有機/金属ハイブリッドポリマーであり、非晶質(アモルファス)のため、スピンコートなどによるフィルム化が容易で、またユウロピウムイオン錯体に由来する赤色発光を示す。

同ポリマーフィルムでは、酸性の蒸気に触れることで発光が消え、その後アルカリ性の蒸気に触れることで、再び光りだすことを発見した。また、それらの蒸気を感じて表示と非表示を繰り返す文字の印字にも成功した。これにより、空気中の物質を感知し、知らせてくれる発光センサやディスプレイへの応用に向けた研究が、今後大きく進むと期待しているとNIMSはコメントしている。

ユウロピウムイオンを含む有機/金属ハイブリッドポリマーフィルムにおける可逆なベイポルミネセンス変化