東日本大震災の恐怖や記憶によって「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)のような症状になった人の脳の特定部位が、震災前に比べて萎縮していることが分かった。東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授らの研究グループが脳の画像を解析したもので、さらに脳の他の部位の体積が小さい人ほど症状が出やすいことも分かった。

研究グループは、震災前に磁気共鳴画像(MRI)装置で脳の画像を撮影していた東北大学生42人について、震災から3-4カ月後にPTSD症状の診断と脳の再撮影を行った。学生たちは仙台市周辺に住み、津波被害の直接体験はなかったが、このうち5人がPTSDの初期症状を示し、脳内にあって恐怖記憶の消去に関係する「左眼窩(がんか)前頭皮質」の部位で脳体積の萎縮がみられた。5人は元々、恐怖や不安の処理に関与する「前帯状皮質」という部位も小さかったという。

研究結果は、画像診断によるPTSD症状の早期発見や予防につながるもので、22日付けの米科学誌「モレキュラー・サイキアトリー(Molecular Psychiatry)」(オンライン版)に発表された。

【関連リンク】
ニュース【被災映像が災害派遣医療チーム隊員にも精神的ダメージ】
ニュース【津波映像の放送自粛日本医師会が申し入れ】