京都大学(京大)の松山隆司 情報学研究科教授は、エネルギーの情報化システムとして、生活の質を損なうことなく、生活者が指定した省エネ率を確実に実現する機能を持った「オンデマンド型電力制御システム」を開発したと発表した。
同教授は日本独自の電力エネルギーマネジメント方式として、数年前から「エネルギーの情報化」という考え方を提唱し研究開発を進めてきており、2009年5月より産学連携組織として「エネルギーの情報化ワーキンググループ」を創設し、海外も含めた幅広い研究開発活動を展開して来たほか、2010年8月には、「エネルギーの情報化」の有効性を示すための第一段階のシステムとして、通常のマンションルーム内のすべての家電に、高精度電力計測・信号処理・通信機能を備えた「スマートタップ」を付け、エネルギー消費のリアルタイム計測・表示、人間・電気機器の安全安心見守り、省エネコンサルティングを行う「エネルギー消費の見える化」システムを完成させており、今回の成果はこのエネルギーの情報化システムの第2弾と位置づけられるという。
今回開発された"オンデマンド型電力制御システム"の動作原理は以下のとおり。
- 利用者が電気機器のスイッチを入れると機器が必要とする電力を記した情報パケットが電力マネージャに送信される(スイッチを入れても直接電気機器がONになるわけではない)
- 電力マネージャは、電力要求の優先度、現在、今後の電力需給状態を考慮して、利用可能な電力使用量、時間を割り当てる。つまり、利用者が予め設定した瞬時電力の最大値(W)および積算電力量(Wh)の制限値を超えない範囲内で電力供給を行う(Best Effortで電力供給を行うため、すべての要求が100%満たされるわけではない。つまり、100Wの要求に対して80Wしか給電されないこともありうるし、他に優先度の高い機器が稼働しており、供給電力に余裕がないと、電力要求が拒否されることもある)
- 給電開始許可のパケットを受けるとはじめて、電気機器へ電気が通じる。その際、スマートタップは、許可された電力量の範囲内でしか電気機器に給電しない
- 電気機器が稼働中であっても、より優先度の高い電力要求が発生したり、社会全体の電力需給が逼迫し、電力会社からの緊急節電要請に基づいて利用可能な最大瞬時電力が下げられると、電気機器への給電が削減、中断されることがありうる(エアコンや照明などのように、生活環境を整える機器の場合は、短い時間であれば、電気を削減しても生活に大きな影響がないので、温度や明るさを制御して消費電力を削減する。また、コーヒーメーカや湯沸かしポットなどの場合は、電気を削減しても出来上がりが少し遅れるだけなので、ほとんど問題はないなど、様々な家電の特性を活かした節電が自動的、リアルタイムに行われる)
図2は、スマートマンションでの実生活実験で計測された実際の電力消費データを基に、オンデマンド型電力制御システムのシミュレーションを行った結果。左が瞬時電力(W)、右が積算電力(Wh)の変化を表し、青線が実際の生活における消費電力、赤の破線が制限値(最大瞬時電力:1200W、積算電力量:30%減)、赤線が制限値を満たすように修正された電力使用計画、緑線がシステムによる電力制御の結果得られた消費電力となっており、指定された省エネ率が確実に実現されていることが分かる。
なお、松山教授は現在、オンデマンド型電力制御システムに、家庭用、オフィス用蓄電池を導入し、それらを知的に制御することによって、生活の質を保証しつつさらなる省エネを実現するシステムの開発を進めているとしている。