シーメンスPLMソフトウェアは5月22日、都内で会見を開き、同社が4月24日(米国時間)に発表した次世代PLMシステム「Teamcenter 9」に関する説明と日本市場向けの取り組みなどを披露した。

Siemens PLM SoftwareのTeamcenter担当マーケティング・ディレクターのStu Johnson氏

登壇したSiemens PLM SoftwareのTeamcenter担当マーケティング・ディレクターのStu Johnson氏は、「我々のビジョンはカスタマがよりスマートな意思決定を行い、より良い製品を作るための手助けをすること」と自社のポジションを述べ、そのために以下の3つの領域に注力しているとした。

  1. インテリジェントに統合された情報
  2. 将来に対応したアーキテクチャ
  3. PLMを使いやすいものにしていくHD-PLM

1つの製品に搭載されるソフトの増大や半導体デバイスの高機能化などにより製品開発は複雑化している。従来、要件定義やテストなどはPLMとは異なるものとして扱われてきたが、その結果、情報が分散して、その関連性などがどのようにつながっているのか、などを理解する必要が出てきた。

3つの注力分野と、それにより得られる様々な効果

Teamcenter 9では、これを「システムズ・エンジニアリング・モジュール」の追加により管理することが可能となった。何かの変化があったとき、自動的に要件をトレースして、コンプライアンス評価を可能としたほか、組み込まれたMicrosoft Officeクライアントにより、Teamcenter内ですべての要件を管理したり、アップデートすることが可能となったという。また、トレースマトリックス機能により、複数の関係の状態を見ることが可能となったほか、Microsoft VisioをTeamcenter内に統合したことで、ダイヤグラムを作成するのと同時に、それをTeamcenterが捕捉し、管理できるようになり、生産性や管理機能の向上が可能になったという。

複雑化する製品開発に伴い、システムのためのシステムが多数存在する状況になり、複雑さに拍車をかけることとなる。システムズ・エンジニアリングを活用することで、情報をインテリジェントに統合することが可能となり、要件、モデル、解析のスキームを簡素化して実施することが可能となり、品質の向上ができるようになるというのが同社の主張するところ

シーメンスPLMソフトウェアの代表取締役社長 兼 Siemens PLM Softwareバイスプレジデントの島田太郎氏

こうした新たな機能を多数搭載したTeamcenter 9だが、日本での動きとして、日本法人シーメンスPLMソフトウェアの代表取締役社長 兼 Siemens PLM Softwareバイスプレジデントの島田太郎氏は、「すでに発表前から複数の企業が導入を決定済み」とする。これは、日本企業が必要とする機能を一緒に作る形で開発が進められたことが背景にあるほか、日本企業が必要とする品質の作りこみが最大限行われてきたことにあるという。

特にシステムズ・エンジニアリング機能は、「製品の目的とその結果の関連を正確に表現することを意識した作り込みが行われた」(同)という。例えば飛行機を作る場合、次世代機は前世代機ができて数十年後ということが良くあり、過去の資料や思想をすべて調べてから設計が行われる。その形状をなぜ採用したのか、そのラインカーブがどうしてそのように決められたのか、背景を知らずに、以前からそうだから、というだけで使っていては設計力が落ちていくこととなる。「同機能により、要件を定義し、モデル、解析を行うことで、設計の目的と設計結果がどういう関連性を持っているのかをわかりやすく表現することが可能となった」ということが、こうしたニーズに対応できると評価されたことによる点が大きいという。

また、頻繁に使用するツール内部の機能のパフォーマンス向上も実現しており、最大8割のパフォーマンス向上が図れるようになり作業者のストレス軽減が可能となったほか、品質向上のためのテスト機能も強化されたことも採用の大きな要因となったという。

「我々はPLMシステムベンダであるが、また、Siemensという製造業に携わる企業と連携しており、それゆえの品質の維持にこだわっている」(同)とのことであり、Teamcenter 9の開発時には、社外のカスタマ43社とベータテストを実施。400以上の不具合を解決するなど、品質面での向上を実現してきており、すでに導入を決定した国内企業はベータテストに参加した企業が多いという。

Teamcenter 9を活用することで、情報共有やコミュニケーション、検索などとも連携することが可能となり、真の意味でのグローバルに向けたものづくりビジネスの推進が可能になるという

なお、日本向けのスケジュールとしては、すでに代理店向けトレーニングは終えており、6月中旬から代理店との共同広告を展開するほか、7月19日にカスタマ向け発表会を予定しており、7~9月期以降に代理店と連携した拡販活動を実施していく予定としている。なお、これだけの期間をとっている理由を島田氏に確認したところ、カスタマ側での評価期間の短縮に向けた代理店のさらなる製品特性の理解などを現在進めているため、との回答を得た。