カネカは5月21日、熱可塑性樹脂そのものを高熱伝導化する技術を開発し、この技術を応用して高熱伝導性、良成形性、低比重、電気絶縁性を兼ね備えた樹脂材料を開発したことを発表した。同成果の一部は、2012年5月29日(火)~31日(木)の期間でパシフィコ横浜にて開催される「第61回 高分子学会年次大会」および、同6月12日および13日の期間でタワーホール船堀にて開催される「第23回 プラスチック成形加工学会年次大会」にて発表される予定。
熱伝導性樹脂材料は現在、自動車、情報端末、照明のような電気・電子機器の放熱材料として注目を集めるようになってきている。樹脂は高い電気絶縁性を有し、成形加工が容易である一方、熱伝導率が低い材料(0.1~0.3W・m-1・K-1)であるため、熱伝導性を付与する目的で、大量の熱伝導性無機フィラーを添加する方法が一般的に採られているが、大量のフィラーを添加すると樹脂材料の比重が高くなる、成形加工性が悪化するなどの問題があった。
こうした課題に対し、同社では今回、独自の分子設計と高次構造制御によりベース樹脂を高熱伝導化し、少ないフィラー添加量で樹脂材料を高熱伝導化する技術を開発した。同技術を適用することで、汎用樹脂と比較した際、同等の熱伝導性を発現させるのにフィラー添加量を約20 vol%削減できるようになり、従来技術では困難であった10W・m-1・K-1以上の高熱伝導性または厚み方向への高熱伝導性を有する、成形加工性の良好な樹脂材料の設計が可能となったほか、ベース樹脂は植物由来度50%強のバイオマスポリマーであるため、カーボンニュートラルの実現にも寄与するという。
同社では、電気・電子機器の発熱を解決する熱対策材料(サーマルソリューションマテリアルズ)の開発を行ってきており、すでに2008年12月に熱拡散シート「グラフィニティー」を上市、2009年4月には独自の反応性オリゴマーをベースにした「熱伝導性RTVエラストマー」を、2010年1月には改質PET樹脂「ハイパーライト」の技術をベースにした「絶縁熱伝導性樹脂」を発表してきているが、今回の技術をベースにした新グレードを今後、積極展開していくことで、5年後の売上高として約20億円を目指すとしている。
なお、新グレードの主な特徴は以下の通り。
- 面内方向14W・m-1・K-1グレードおよび等方3W・m-1・K-1
- 比重が1.8~2.1と、金属やセラミックスと比べて軽量
- V-0相当の難燃性
- 成形流動性に優れ、通常の射出成形機で成形可能