イーソルは、国際標準規格のUDS(Unified Diagnosis Services、ISO14229)およびDiagnostics on CAN(ISO15765)に準拠した車載診断プロトコルスタック「eSOL Dr.CAN」とECUリプログラミングサービスモジュール「eSOL Dr.Repro」を開発したと発表した。
自動車の走行性能や安全性、快適性のさらなる向上や環境負荷の低減など、厳しい要求に対応するため、車載電子制御システムの高機能化と複雑化が進み、車両1台にネットワーク化された多数のECUが搭載されている。これに伴い、ECU本来の制御機能と合わせて、車載診断機能の実装も不可欠になってきた。車載診断機能を実装すると、開発や製造段階でECU内部の診断データを確認して不具合や故障発生を未然に防ぐことができる他、市場投入後には、工場やディーラの店舗で迅速に故障原因を把握して適切な対応ができるなどといった効果がある。また、車載診断機能の1つであるECUリプログラミング機能では、コストがかかる部品交換をせずに、ECUソフトウェアを書き換えて不具合を修正したりや更新するといった修理法も実現する。このように、車載診断機能は、大規模化するECUのソフトウェア品質の確保に重要なものとなっている。
一方で、車載診断アプリケーションの開発では、納品先の自動車メーカーや車種、ECUの種類などによって異なる通信仕様に合わせた車載診断プロトコルを個別に開発する必要があったため、開発コストの高さが課題だった。
「eSOL Dr.CAN」は、ECU本来の制御機能のパフォーマンスと信頼性に影響を与えずに、CAN経由の診断通信機能を実現するプロトコルで、OSがないシステムでも利用が可能。ECU制御プログラムから一定周期で「eSOL Dr.CAN」の関数を呼び出すだけで、ISO仕様で定義されたタイムアウト管理を含むプロトコルの挙動を意識せずに、容易に診断サービスを起動できる。このため、CANドライバと各診断サービスアプリケーションを作成するだけで車載診断機能が実現する。「eSOL Dr.Repro」は、開発、製造、市場投入後の各段階で利用できるECUソフトウェアとキャリブレーションデータの書き換えるリプログラミングを実現する。これらにより、開発期間を1/2~1/5に短縮できる他、国際標準規格に対応したことで、特定の自動車メーカーだけでなく、複数の自動車メーカーに納品することも可能となる。
「eSOL Dr.CAN」と「eSOL Dr.Repro」は、日産自動車の多数のECUに採用実績がある前バージョンをベースに、UDSに対応する形で開発されたため、その信頼性と品質が確保されている。イーソルでは、「eSOL Dr.CAN」「eSOL Dr.Repro」の提供に加え、車載制御システム開発の高い技術と豊富なノウハウをもとに、各種サービスをあわせて提供。「eSOL Dr.CAN」と「eSOL Dr.Repro」の実装や車載品質要求に沿ったテストの受託開発、ISO仕様を満たしたテスト結果報告書の作成サポートなども行うという。
両製品の発売は、2012年第3四半期を予定している。