震災と市況悪化により売り上げ大幅減、営業損益は赤字に転落

ルネサス エレクトロニクス代表取締役社長の赤尾泰氏

ルネサス エレクトロニクスは5月9日、2012年3月期の通期決算概要を発表した。売上高は、東日本震災やタイの洪水の影響、ならびに欧州・中国を中心とした市況悪化などにより、前年度比で22.4%減となる8831億1200万円半導体分野の売り上げは前年度比2329億円減の7860億円となった。また、営業損益は研究開発費効率化、販売費および一般管理費の削減などの費用削減策を実行したものの、売上減による利益減をカバーするまでには至らず前年度の145億2400万円の黒字から567億5000万円の損失と、赤字に転落。経常損益も同様に前年度10億3300万円の黒字から612億2800万円の損失へと赤字転落となったが、純損益は同1150億2300万円の損失から626億円の損失へと赤字幅が縮小された。

この純損益の赤字幅縮小は、災害損失引当金の戻し入れやパワーアンプ事業の譲渡などによる特別利益213億円があるほか研究開発費の効率化を含む販売費および一般管理費の削減などによる約450億円の改善が図られたことによるものだという(震災影響などによる特別損失は197億円発生)。

ルネサス エレクトロニクスの2012年3月期決算概要と四半期別の業績推移

半導体事業別の売上高は、マイコン事業が東日本大震災の影響からの巻き返しを狙う日系自動車メーカーの増産に伴い、下期にかけて自動車分野向けが回復。前年並みまで売り上げ水準が回復したものの、タイの洪水影響や欧州/中国を中心とした市況悪化による需要減などによるパソコン周辺機器向けや民生用電子機器向けの売り上げが減少した影響を受け、前年度比12.4%減となる3363億円となった。またアナログ&パワー半導体(A&P)事業は、パソコンおよび液晶テレビ向けドライバICや民生用電子機器向けパワー半導体、アナログICの売り上げが減少したことにより、同22.9%減の2438億円となった。そしてSoC事業は、やはり民生用電子機器向けや携帯端末向けの売り上げが減少したことにより、同35.5%減の2012億円となった。

半導体事業の事業別の概況

自動車を中心に事業の拡大を目指す計画

また同社は決算の発表と併せて、2010年4月の同社発足時より進めてきた事業統合改革に関する現在の状況に関する説明も行った。2012年3月期に行った具体的な事業・生産構造対策としては、パワーアンプ事業の譲渡、大型表示ドライバIC事業からの撤退、コンシューマ向けなどのライフサイクルの短いSoC製品の集約などが図られたほか、生産工場の縮小、譲渡も進めており前工程工場では2工場(米ローズビル8インチ/津軽6インチ)が売却されたほか、3工場(甲府6インチ/高崎5インチ/滋賀5インチ)が縮小・集約された。また、後工程工場も同様に、長野工場の譲渡、青梅工場の閉鎖、閉鎖した福岡工場の土地売却などが行われた。

また、コアコンピタンスであるマイコン事業の強化を掲げており、2013年3月期(2012年度)上期中のサンプル出荷を見込むRH850での自動車分野でのポジション強化を図っていくほか、強みがあるマイコンにA&P製品を組み合わせて販売するなどにより、売り上げの最大化を図りたいとしている。さらに、マイコンと再構成可能なアナログ回路を組み合わせた「Smart Analog」製品の製品展開強化も進めており、2012年度中に1000センサをサポートする計画としている。

次世代のマイコンコアを3つに集約して、それを軸に事業の強化を図っていく

このほか、Nokiaから買収したモデム技術をベースとしたLTEモデムと、アプリケーションプロセッサを組み合わせたモデムプラットフォームやLTEモデムとアプリケーションプロセッサを1チップ化した製品をスマートフォン向けに提供していくほか、通信機能を搭載するさまざまな携帯端末向けに販売を図っていくことで、同事業の強化を目指すとしており、現在、14社のデザインインを獲得しているが、今後、さらなる拡大を目指すとしている。

なお同社では、現在、半導体市況の一部に改善の兆しが見られるものの、全般的にはいまだに厳しく、先行き不透明な状況が続いていることを理由に、市況を見極める必要があるとの理由から、現時点での2012年度通期の業績見込みを開示しないとしており、今後の2012年度第1四半期業績などを見たうえで発表する予定としている。