東日本大震災の災害派遣医療チーム(DMAT)として援助活動を行った隊員に対する調査で、活動直後に大きな苦痛を感じ、かつその後、震災関連のテレビをよく見たと答えた人ほど「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」の症状が強く見られることが明らかになった。
国立病院機構災害医療センター精神科の松本豊医師らは、東日本大震災直後に被災地で医療活動を行ったDMAT隊員254人に対し、派遣中の活動内容と活動中に感じた苦痛について、まず震災発生1カ月後の4月にアンケートした。さらに「震災関連のテレビの視聴時間」についても尋ねた。
7-8月には、これらの隊員に対しての追跡調査として(回答率約68%)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断基準である「再体験」「回避」「覚醒亢進(こうしん)」の有無と程度を調べた。
この結果、精神的苦痛が大きかったことに加え、震災1カ月後に震災関連のテレビを視聴する時間が「1日平均4時間以上だった」と答えた隊員に、PTSD症状が強く見られることが明らかになった。これらの人々が震災1カ月後に感じた苦痛の中では「感情的になった自分を恥じた」、「感情的に取り乱しそうになった」という2項目が多い。
災害派遣医療チーム(DMAT)は、厚生労働省が大規模災害や多くの傷病者が出た現場に送り込み、救命活動に重要な時間とされる48時間以内に迅速な医療活動を行う任務を帯びている。医師、看護婦とその他の医療職、事務職員で構成される。
大震災の被災地の映像が被災者のPTSDに及ぼす影響については、特に津波の映像が精神的ダメージを与える可能性を懸念する日本医師会が、放送を可能な限り自粛することを求めた要望書を3月1日付で、放送倫理・番組向上機構、日本放送協会(NHK)、民放連、キー局放送審議会宛てに送っている。
この調査結果は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出」の一環として得られた。
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