松谷化学は4月19日、名城大学、香川大学と共同で、ノンカロリーで甘味度が砂糖の7割程度の希少糖の1種「D-プシコース」と、それら希少糖を含む「希少糖含有異性化糖(希少糖含有シロップ)」が、肥満を伴う2型糖尿病ラットを用いた研究において糖尿病および肥満症の予防に有用であることを確認した。

成果には、同社研究所のほか、名城大薬学部の三輪一智教授、豊田行康准教授、香川大医学部の徳田雅明教授らの研究グループによるもの。今回の研究は、5月19日にパシフィコ横浜で開催される「第55回日本糖尿病学会年次学術集会」のポスターセッションにおいて、豊田行康准教授により発表が行われる予定だ。

希少糖は、自然界に稀にしか存在しない「単糖」と定義されている。D-プシコースは、抗糖尿病および抗肥満作用を示すことが、またD-プシコースを含む希少糖含有シロップは内臓脂肪蓄積抑制作用を示すことが確認されている。

さらにD-プシコースは、腸管における「α-グルコシダーゼ」およびグルコース輸送の阻害、肝臓における「グルコキナーゼ」の核外移行の促進による食後血糖低下作用を示すことも確認済みだ。

肥満を伴う2型糖尿病と糖尿病性合併、特に腎症を発症するモデル動物の「OLETF(Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty)ラット」へのD-プシコースの長期投与により、食後血糖低下および体重増加抑制が起こることも確認されている。

ヒト試験においても軽度耐糖能異常者へのD-プシコース投与により、耐糖能の改善が認められている状況だ。また、肥満者への希少糖含有シロップの投与により体重減少も確認済みである。

そこで、D-プシコースおよび希少糖含有シロップが糖尿病および肥満症の予防に有用であるかどうかを調べる目的で、健常ラットのWistar系雄性ラットへD-プシコースあるいは希少糖含有シロップ溶液を飲水下で長期間投与し、投与後の内臓脂肪量、インスリン感受性、尾静脈血中のインスリン、「グルカゴン」(インスリンと共に血糖値を安定させるペプチドホルモンの1種)、タンパク質「アディポネクチン」濃度が測定されたのである。

Wistar系雄性ラットに3.75%D-プシコース溶液、あるいは希少糖含有異性化糖を6週齢から15週齢までの10週間にわたって自由飲水下で投与し、対照群には水を投与した。

そして、D-プシコースあるいは希少糖含有シロップ投与8週後に糖負荷試験(2g/kg グルコース)およびインスリン感受性試験が行われた。また、D-プシコースあるいは希少糖含有シロップ投与10週後に、尾静脈血中アディポネクチン測定を行うとともに、内臓脂肪量(精巣上皮、腎周囲、腸管膜脂肪量)の測定も実施。さらに、糖負荷後30分における尾静脈血中のインスリンおよびグルカゴン濃度も測定された。

D-プシコースおよび希少糖含有シロップ投与8週後において、D-プシコース投与群および希少糖含有シロップ投与群のいずれにおいても糖負荷時の尾静脈血糖値およびインスリン濃度の推移は、いずれの時間においても対照群と比べて有意に低く、耐糖能の増強が認められた。

インスリン感受性試験においても両群ともインスリン感受性の増強を確認。また、投与10週後において両群とも尾静脈血中のアディポネクチンは、対照群と比べて有意に高く、内臓脂肪の精巣上皮、腎周囲、腸管膜脂肪量は、対照群と比べて有意に低値を示し、糖負荷後30分の尾静脈インスリンおよびグルカゴン濃度も対照群と比べて有意に低値を示した。

これらの結果より、健常ラットへのD-プシコースおよび希少糖含有シロップ投与により糖・脂質代謝に対して有益な変化が起こることが判明したのである。つまり、D-プシコースとその同類の希少糖の摂取は、糖尿病および肥満症の予防に有用である可能性が示唆された形だ。