パナソニックとハーバード大学 公衆衛生大学院 環境衛生ナノサイエンス研究所は、水に高電圧を加えることで生成されるナノサイズの帯電微粒子水「ナノイー」の曝露による細菌抑制のメカニズムの可視化を実現したことを発表した。同成果は日本エアロゾル学会誌「エアロゾル研究」にて発表された。
これまで、パナソニックが提供してきたナノイーの作用として、衣類・カーテンに付着したニオイの脱臭効果やウイルス、細菌、真菌、花粉・ダニのアレル物質の抑制効果が実証されてきていたが、今回、新たにその抑制効果のメカニズムを解明するため、細菌の一種であるセラチア菌(Serratia marcescens:セラチア マルセッセンス)にナノイーを曝露して抑制効果を確認し、形態観察の観察を行った。ちなみにセラチア菌は自然界の土や水の中、および動物や人の腸の中などに存在しており、院内感染症や日和見感染症を引き起こす原因菌として知られている。
検証時期は2011年8月から10月で、具体的な検証方法としては、45Lボックス中で、セラチア菌溶液を滴下したステンレス板に、ナノイーを曝露。試験後、セラチア菌を抽出、培養して、生菌数を測定した。なお、形態観察は、90分曝露ありとなしのセラチア菌を透過型電子顕微鏡(TEM)観察用に処理を行い、観察している。
この観察から、TEMでの形態観察で、セラチア菌の細胞膜の著しい損傷が確認されたという。この結果、ナノイーによる細菌抑制のメカニズムは、細胞膜の損傷によるものであると考えられるとの結論に至ったという。
なお、今回の研究に付いて、ハーバード大学 公衆衛生大学院 環境衛生ナノサイエンス研究所所長のPhilip Demokriyou博士は、「今回の研究報告で示されるように、ナノイーはセラチア菌の細胞壁と細胞膜を損傷し、抑制効果もあることがわかりました。今後、帯電微粒子水が菌・ウイルスを抑制する可能性や、空気滅菌・食品業界・院内感染予防の分野における帯電微粒子水の応用について、パナソニックと共同研究が進むことを期待しています」とコメントしている。