富士通と長崎医療センターは3月28日、被災時にも地域における診療を継続するためのバックアップシステムを構築し、本格運用を開始したと発表した。

同システムは、富士通のプライベートクラウド型の医療機関向け災害対策ソリューション「HumanBridge BCPソリューション」を利用したもので、作業開始から1ヵ月で構築を完了した。

通常、長崎医療センターの電子カルテシステムの診療データは、リアルタイムで電子カルテの標準フォーマットであるSS-MIX準拠のデータ形式で抽出され、データセンター内のバックアップシステムに保管される。並行して、1日に1回、電子カルテシステムおよび医事会計システムのバックアップデータがデータセンタに送信される。

また、同ソリューションには電子カルテの参照ビューワを装備しているため、被災時には避難所や他の医療機関から診療データを参照して診療活動を迅速に立ち上げることができ、メモ機能を使って現場での診療記録も残すことができるようになる。

被災などにより、長崎医療センターの電子カルテシステムが利用できなくなった時は、日本国内であればPCをインターネットに接続して認証を行うことにより、医師や看護師などの診療スタッフが患者の同意を前提にデータセンタに保管された診療データを参照することができる。他地域から応援に来た医師や看護師などのスタッフも過去の診療データや基本的な情報(血液型、既往歴、アレルギー情報など)を参照したうえで診療を行うことができる。

長崎医療センター内のICT基盤が再構築された後は、電子カルテサーバにデータセンタのバックアップデータを戻し、電子カルテシステムが復旧される。被災時にメモ機能を使って入力された診療記録は、災害時診療記録として電子カルテシステムから参照可能となる。

長崎医療センターの災害対策ソリューションの仕組み

今回活用したHumanBridge BCPソリューションは、医療情報の分野では標準規格となっているSS-MIX標準化ストレージを用意しているため、電子カルテの種類にこだわらず適用可能。

「HumanBridge BCPソリューション」の仕組み