ロームは、内蔵するパワー半導体素子をすべてSiCで構成した"フルSiC"パワーモジュール(定格1200V/100A)の量産を開始することを発表した。同製品を産業機器や太陽電池などで電力変換を担うインバータ、コンバータに組み込むことで、電力損失を削減することが可能となる。
今回、同社では、独自の欠陥抑制技術やスクリーニング法を開発することで信頼性を確保。また、SiC特有の1700℃に及ぶ高温プロセスでの特性劣化を抑制する技術などを開発し、フルSiCパワーモジュールの量産体制を確立した。
最先端のSiC-SBDとSiC-MOSFETのペアを2素子搭載し、従来のSi-IGBTモジュールに比べて電力変換時のスイッチング損失を85%以上低減することができる。また、IGBTモジュールに比べ10倍以上となる100kHz以上の高周波動作を実現した。定格電流は100Aであるが、高速スイッチングと低損失化により、定格電流200~400AのSi-IGBTモジュールを置き換えることが可能となっている。
さらに設計およびプロセスの改善により、放熱性の良いモジュール開発にも成功し、従来の400AクラスのSi-IGBTモジュールを置き換えた場合、体積を約50%削減することができる。低損失なため熱の発生が少なく、外付けの冷却装置も小さくできるため、機器全体の小型化にも大きく貢献する。
同製品は、ローム本社工場(京都市)で3月下旬から量産・出荷する予定。
同社では、SiCをはじめとしたパワーデバイス事業を成長戦略の一つと位置付けており、今後もさらなる高耐圧化、大電流化を実現したSiCデバイス/モジュールのラインアップを強化するとともに、SiC トレンチMOSFET やSiC ?IPM(インテリジェント・パワー・モジュール)など、SiC 関連製品のラインアップ拡充、量産化を進める方針。