富士通研究所は3月26日、付箋を用いたブレーンストーミングの結果の電子化を支援する技術を発表した。この技術の開発により、ブレーンストーミングの後日の振り返りや検索・利活用が容易になり、作業工数を80%以上削減することに成功した。
同社は顧客の業務課題を分析するために、付箋紙を用いたブレーンストーミングを活用している。しかし、その結果を電子化して保存するには手書きのカードを人の手でテキスト入力する作業を伴うために多大な工数が必要となり、作業効率化の課題となっていたという。
そこで同社は、独自の画像処理技術をデジタルペンの活用と組み合わせることで、カード群を撮影した画像から個々のカードの位置と内容を電子化しやすくする技術を開発した。
付箋紙を貼ったホワイトボードをデジタルカメラで撮影した場合、会議室の照明の具合によって、明るい部分や影がかかった部分が発生してしまい、個別のカードの領域を画像処理で自動抽出することは困難だった。この課題を解決するため、画像を2値化(モノクロ画像に変換)した上で階層的に分析したところ、多様な照明環境のもとでも高精度にカード領域を抽出することができるようになった。この手法により、同社での自動抽出の精度が58%から93%にまで上昇した。
また、付箋紙に記入した手書き文字を読み取るために文字認識を行っても、高い精度を実現することが難しかった。そこで、付箋紙に書き込んだ文字の軌跡情報をデジタルペンを活用して読み取り、カード領域の画像と照合。デジタルペンの文字認識結果を、対応するカードのテキストとして自動入力できるようになったため、精度が90%から98%へと改善した。
メディア処理システム研究部 主任研究員の堀田悦伸氏によると、従来のブレーンストーミングの電子化支援システムは、特殊なドットパターンを印字した紙が必要であるなどの障壁により、普及が順調に進んでいなかった側面があった。そこで極力特殊なハードウェアが不要な電子化支援システムの開発を目指し、デジタルペンも市販されている製品を選んだと説明した。
同社は2013年度の実用化を目指し、実証実験を踏まえてさまざまな利用シーンへの適用を検討していく。今後は乱雑に貼られたカードの抽出や、ホワイトボードに直接書かれた囲み線を認識させてカードをグループ化する仕組みなどへの対応を進めるという。同技術の販売予定については未定となっている。