広島大学大学院先端物質科学研究科の東清一郎教授らの研究グループは、「LWC(Leading Wave Crystallization)」と名付けた、新しい結晶成長メカニズムを発見し、大気圧プラズマを用いてガラス基板上に高品質シリコン薄膜の結晶を成長させることに成功したことを発表した。これにより、高性能太陽電池用の高品質シリコンを低コストで製造できるという。なお、同研究成果の詳細は3月15~18日に早稲田大学で開催された「第59回 応用物理学関係連合講演会」において発表された。
高い変換効率を有する太陽電池を低コストで製造できる新技術の開発が急務となっている中、これまでの研究で、1万度を超える超高温を有するプラズマ照射によりミリ秒の短時間でシリコン薄膜が溶融し、融液が冷えて固まる際に高品質結晶が成長することが分かっていた。しかし同技術を高性能太陽電池製造に適用するためにはより精密な結晶成長の制御が必要であり、ミリ秒の短時間での結晶成長がどのように進行するのか、またそのメカニズムを理解することが重要となっていた。
東教授らのグループは高速度カメラを用いた測定システムを構築し、シリコン融液から結晶が成長する様子を撮影することに成功した。ミリ秒の時間領域でシリコン融液から結晶が成長する過程を動画で捉えたことに加え、これまで知られていなかった新しい結晶成長メカニズム(LWC)を発見した。 今回の開発では、LWCによる大気圧プラズマジェットを用いた急速熱処理技術を開発し(図)、ガラス基板上に高品質シリコン薄膜の結晶を成長させることに成功した。 同方法を用いることで、従来の方法よりさらに高品質のシリコン結晶が成長できることが明らかになり、低コスト太陽電池の製造への道が開いたという。