パナソニックは3月19日、1W以下のミリ波ギガビット無線チップセットを開発したことを発表した。同チップセットはWiGigアライアンスなどが策定する超高速無線通信の標準規格に対応しており、幅広い通信機器端末と安定した双方向通信を可能にする。同チップセットを用いることで、1W以下の省電力性が求められるモバイル機器への内蔵が可能となり、圧縮された30分程度のハイビジョン映像データを、10秒程度でモバイル機器に転送できるようになるほか、モバイル機器上に表示されたハイビジョン映像を遅延なく大画面テレビに転送できるため、従来以上にリアリティのある操作感で、機器間の連携を可能にできると同社では説明している。

同社では、これまでにも送受信部と変復調処理部をCMOS集積化する回路技術を確立していたが、今回、送受信LSIと、パケット処理部を含むベースバンド処理LSIからなる無線チップセットを開発した。従来のパケット処理は汎用プロセッサを用いているため、高速化するには動作周波数を上げる必要があり、消費電力が大きくなる課題があった。今回、パケット処理のうちパケットのタイミング制御を行う高速データ処理回路を新たに設け、汎用プロセッサとの動作を最適化することで、動作周波数を上げることなく20%以上高速化した。これにより、毎秒2.5Gビットの高速データ伝送を消費電力1W以下で実現した。

従来の送受信LSIの設計方法においては、日本や欧州で採用されている60GHzの無線周波数を用いる場合、そのトランジスタ間の回路長を数百μm以上にする必要があるため、多くのトランジスタを集積化した無線チップの小型化に制約があった。同社では、新たに回路をコイル型にすることで回路長を短縮し、小面積化を実現する手法を考案した。60GHz帯における高精度コイル型回路設計技術を確立することで、送受信LSIとして従来の半分以下の小型化を実現した。また、9GHzの帯域幅にも対応している。

ミリ波ギガビット無線チップセットの製品写真(左:送受信LSI、右:ベースバンドLSI)