東京商工リサーチはこのほど、「震災関連損失」調査結果を発表した。2011年3月に発生した東日本大震災の影響で、サプライチェーンの混乱などさまざまな被害が企業にもたらされ、上場企業3,543社のうち、震災以降、本決算・中間決算の損益計算書において特別損失で震災(災害)関連の損失を計上したのは1,356社(構成比38.2%)で、上場会社の約4割を占めた。前年同期に比べ社数は41倍、損失計上額は581.4倍に達している。

特別損失の合計額10兆4,820億円のうち、震災(災害)関連損失額は4兆703億円(構成比38.8%)に達した。震災関連損失の内容別では、「災害による損失」は1,265社が計上、金額は1兆6,371億円(構成比40.2%)と最大だった。次いで、東京電力や東北電力による「災害特別損失」が2社、同1兆3,786億円(同33.8%)、東京電力の「原子力損害賠償費」が1社、同8,909億円(同21.8%)だった。

震災関連損失内訳 資料:東京商工リサーチ

産業別での震災関連損失計上額では、東京電力が含まれるサービス業他が2兆7,972億円と最大で、次いで、製造業が8,861億円、金融・保険業が1,004億円となった。前年同期に火災事故などの災害関連損失を計上したのは33社(金額70億円)だったことからも、東日本大震災が産業界に大きな影響を及ぼしたと言える。

産業別 震災関連損失内訳 資料:東京商工リサーチ

震災関連損失計上額トップは、福島第一原発事故に起因した東京電力の2兆964億円(2011年3月期1兆204億円、同9月中間期1兆759億円)。次いで、同じく東北電力の1,731億円(同833億円、同897億円)、JXホールディングスの1,374億円(同1,260億円、同114億円)だった。

震災関連損失額上位20社 資料:東京商工リサーチ

東京商工リサーチは、「震災の影響で、上場企業全体で4兆703億円という莫大な経済的損失となって表面化し、円高の高止まり、市況の停滞など売上が伸び悩むなか、東日本大震災関連倒産件数は636件(2月末集計時点)発生し、震災の影響は直接・間接に広範囲に波及している。大手企業が損失を取り戻すには、業績拡大だけでなく徹底したコスト管理にも取り組むと予測される。このシワ寄せは中小企業に押し寄せ、ボディーブローのように企業体力を奪うと思われるが、今後はこれをバネに従来の企業活動を見直し、新産業などの育成も急がれる」と分析している。