コンバート有限責任事業組合は3月8日、広和金属工業が開発した車載式熱分解装置「コンバート」と、インパクトが開発した放射性セシウム吸着剤「MI-4A(エムアイ・フォーエイ)」を組み合わせた「移動式除染・減容化システム」の提供を、この3月より開始すると発表した。
現在、除染作業で発生する汚染土壌や廃棄物の量は、福島県内だけでも最大約3100万立方メートル(東京ドーム25杯分)に達すると試算されており、除染除去物減容化技術の確立が急務となっている。
この移動式除染・減容化システムの核をなす技術の1つであるコンバートは、装置の大きさを従来型の1/6以下という小型な点が特徴の、車載式(4tトラックに搭載)の熱分解装置だ(画像1)。400℃から500℃で炭化することで、汚染廃棄物の体積を最大1/10程度にまで減容化することができる。
また、コンバートは内部機構に回転キルン型を採用していることから連続投入することが可能だ。約2トン(約1立方メートル)の汚染土壌を1時間で除染・減容化し、高濃度セシウムを抽出できる性能を持つ(コンバート標準タイプPW2-6000の場合)。
また、同装置は、環境アセスメントや設置許可を必要とする焼却炉ではなく、排出されるガスを燃焼させずに分解することによって無害化する熱分解装置(画像2)に区分され、どこにでも運搬、設置可能な点も特徴となっている。
一方の「MI-4A」は、特殊天然ゼオライトや活性炭、酸化鉄などの混合物に、独自開発の凝集促進剤を加えることによって、短時間でのセシウム吸着を実現し、30秒から3分未満で99%以上のセシウムを凝集、沈殿させる、水処理用の吸着剤だ(画像3)。
約1.5kgのMI-4Aを用いて汚染水1tを処理することが可能で、同量のゼオライトと比較して、約10倍の処理能力を持つ(画像4・5)。それにも関わらず、価格が約1/2に抑えられており、コストの面でも優れている。
これらの2つの製品技術を組み合わせ、コンバート有限責任事業組合が提供する移動式除染・減容化システムでは、汚染された土壌や草木、汚泥、稲藁などを、除染し、セシウムを効率的に除去していく(画像6)。処理水のセシウム濃度を検出限界値(1.0Bq/l)未満に除染すると共に、除染除去物を減容化し、処理した土壌の約80%をリサイクルする形だ。
車載式熱分解装置「コンバート」及び放射性セシウム吸着剤「MI-4A」の概要は、以下の通り。
コンバート
- 製品名:コンバート(小型タイプ:PW-3000、標準タイプ:PW2-6000)
- 外形寸法(小型・PW-3000):10.5立方メートル(長さ5.6m×幅2.2m×高さ2.7m)
- 外形寸法(標準・PW2-6000):50立方メートル(長さ6.9m×幅2.9m×高さ2.8m)
- 性能:間接加熱による500℃以下の低温炭化で、有機物を最大約1/10に減容。排出されるガスを燃焼させずに分解することによって無害化。処理後の炭、灰は、再資源化可能。・約2t(約1立方メートル)の汚染土壌を1時間で処理可能(PW2-6000)
MI-4A
- 製品名:MI-4A
- 種類:水処理用放射性セシウム吸着剤
- 原料:特殊天然ゼオライト、活性炭、酸化鉄、凝集促進剤など
- 性能:30秒から3分未満で99%以上のセシウムを吸着、凝集、沈殿し、汚染水のセシウム濃度を検出限界値(1.0Bq/l)未満に除染、吸着剤約1.5kgで汚染水1tを処理(同量のゼオライトの約10倍の処理能力)
現在、コンバートとMI-4Aは福島県・宮城県内において実証実験が進められている最中だ。汚染土壌や廃棄物をその場で直ちに低コストにて除染・減容化できる技術として、自治体や協同組合、建設会社、産業廃棄物処理業者などで活用される方向だ。