新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、大阪市立大学、総合設備コンサルタント、中央復建コンサルタンツ、関西電力の5者は3月7日、NEDOの次世代型ヒートポンプシステム研究開発プロジェクトの一環として、都市域の下水管路網を活用した下水熱利用・熱融通技術の実証試験設備を完成、運転を開始することを発表した。エリアは大阪市千島下水処理場内で、未処理水を用いる下水熱利用実証試験設備(第一期)を構築し、実証試験を開始する形だ(画像1)。
今回の実証試験では、下水管路内の未処理下水から採熱し給湯や冷暖房に利用する下水熱利用システムの効率、信頼性などを検証し、さらに2012年度に実施予定の下水熱融通技術の効率などの検証と併せ、総合効率が既存の熱供給システムの1.5倍以上となることを目指すとしている。
民生部門におけるエネルギー消費は、冷暖房・給湯用が家庭部門で約55%、業務部門で約40%を占めており、これらを削減することが極めて重要だ。ヒートポンプは、冷暖房・給湯のエネルギー消費削減に最も効果的な機器だが、機器単体の改良だけでは削減効果が限定的であるため、熱源や利用側などを含めてシステム化し、ヒートポンプが効率的に作動させる技術を開発する必要がある。
今回のプロジェクトでは、総合効率が現状と比較して前述したように1.5倍以上を有するシステムを確立するため6件のテーマにて技術開発を進めている形だ。
都市部などの下水は、冬季では外気よりも水温が高く、夏季の昼間では外気よりも水温が低いという特徴があるため、従来のガスや油炊きボイラーに替わる給湯用や暖房用ヒートポンプの熱源水や、冷房用の冷却水としての活用が期待されている。しかし、日本における下水の熱源利用は、下水処理施設内と近隣に限定したわずかな事例しかないのが現状だ。
そこで、今回のテーマでは、都市部を流れる下水を未利用の「熱源」ととらえ、下水熱の利用機会を高めるために、既存の下水管路網を対象として、給湯や冷暖房を需要とする建物近傍の管路において下水の熱利用を可能とする下水熱利用システムを開発する。
さらに、下水管路に沿って複数の下水熱利用システムを配置し、採熱や放熱を異なる地点で行う下水熱融通技術の開発を行う。下水熱利用システムは、未処理下水用の熱交換器とヒートポンプからなるが、熱交換器の性能評価や耐久性評価が欠かないのである。
今後、冬季と中間期(春季)までの実証運転を行い、下水熱利用システムの実証を行う予定だ。その後、2012年の夏季には下水熱融通効果を実証するための試験設備(第二期)を追加構築し、中間期(秋季)と冬季において実証試験を開始する計画である。