北海道大学(北大)は、抗ガン剤候補物質と近縁な「ポリエーテル」の1種である「ラサロシド」を作るカギ酵素「Lsd19」の立体構造を決定し、反応を触媒する仕組みを明らかにしたと発表した。成果は、北大大学院理学研究院の及川英秋教授らの研究グループによるもので、詳細な研究内容は英科学雑誌「Nature」に英国時間3月4日に掲載された。
ある種の土壌細菌、海産微細藻は抗菌活性、抗マラリア活性や抗ガン活性を持つ「ポリエーテル」と呼ばれる複雑な構造を持つ有機化合物を生産する。この物質を作るカギ酵素をコードする遺伝子はわかっていたが、どのようにしてポリエーテルを作るのか、その仕組みは不明だった。
今回、遺伝子工学的手法で酵素を大量に調製すると共に、有機合成により出発物質を提供して、酵素タンパクの構造解析を行う研究者と共同で、「Lsd19」と呼ばれる酵素の構造が調べられた。
Lsd19のポケットで、出発物質がどのように結合しているかを調べ、反応をコントロールする場所を特定。これにより、Lsd19がどのように反応を触媒し、ポリエーテルの1種である「ラサロシド」を作るのか、その仕組みが明らかになった次第だ。
今後、カギ酵素を自在に使いこなすことで、ポリエーテル類を合成する方法を開発し、医薬品など有用物質の合成を行うことも可能になるとしている。