東日本大震災からあとすこしで1年が経とうとしている。被災地に足を運んでボランティアに参加する人がいる一方で、被災地から離れた場所で復興支援活動に取り組む人もいる。今回紹介するボランティアプロジェクト「あなたの思い出まもり隊」も、そんな活動のひとつだ。

写真の修復活動に取り組む学生ボランティアスタッフ

「あなたの思い出まもり隊」は、工学院大学の学生ボランティアを中心に、神戸学院大学との連携によって進められている写真修復プロジェクト。「被災地の思い出を残し、被災者の方に喜んでもらいたい」、「被災地には行けないボランティア希望者と被災者をつなぎたい」といった想いから活動が続けられており、活動が開始された2011年7月から12月までの間に、562名のボランティアが参加し、1,043枚の写真が修復された。

ノウハウを詰め込んだ「マニュアル」が完成

そして今回、工学院大学において「写真修復マニュアル」の完成発表会が開催された。このマニュアルには、被災地から送られてきた写真の分類、写真のデジタルデータ化、画像編集ソフトを使った写真の修復など、一連の工程がまとめられている。これから参加するボランティアや、他の団体にこの修復活動を広めていく際に、明文化したガイドラインが必要となるからだ。

写真修復マニュアル

発表会では、本プロジェクトの代表を務める同校建築学部まちづくり学科の村上正浩准教授が活動報告などを行い、「地震による津波で汚れた写真を修復し、被災された方々の大切な思い出を未来につないでいきたい」とその思いを語った。

また、活動の現場でプロジェクトを率いてきた同校工学部建築学科4年の柴間さんは、傷ついた写真を画像編集ソフト「Adobe Photoshop」で修復していく工程を実演した。柴間さん自身、このプロジェクトに携わるまでPhotoshopによる画像編集は未経験。半年間のボランティア活動を通じて、その使い方を習得したそうだ。

工学院大学 建築学部まちづくり学科の村上正浩准教授(左)と、工学部建築学科4年の柴間大輔さん(右)

写真の縁から細かな汚れが浸食してくることが多い。修復不可能な部分は、切り取りで仕上げる

インクが滲んでいる事例も多い。一度色を抜き、修復不可能な部分は切り取っていく

写真の一部が完全に抜け落ちてしまっている部分は、CS5から実装された新機能「コンテンツに応じた塗り」で近しい画像を当てはめる

また当日は、Photoshopの無償提供など、このプロジェクトを支援した企業として、アドビ システムズの代表取締役社長 クレイグ ティーゲル氏も登壇。同氏は「ボランティアの方々の熱意に感銘を受け、支援させていただいた。この活動にPhotoshopの技術が生かされていることは非常にうれしい。新しく作られたマニュアルによって、ボランティアの輪や大切な思い出が広がっていくことを期待している」と語った。

アドビ システムズ 代表取締役社長 クレイグ ティーゲル氏

また村上准教授は「このマニュアルは完成版ではなく、これからバージョンアップしていくもの」と、今後もマニュアルの更新を継続していく方針を表した。なお、本マニュアルは、同様の活動を行う団体に対し、無償で提供していくとのこと。

発表会終了後は、学内にある作業スペースの見学会も行われ、実際に写真の修復作業に取り組むボランティアスタッフの作業風景も公開された。