ルネサス エレクトロニクスは、28nmプロセス世代以降のシステムLSI向けとなるSRAM回路技術を開発したことを発表した。同回路技術は、システムLSIのグラフィックエンジン向けに使用される2ポートSRAMの動作速度を向上させるアーキテクチャで、これを用いることで高速化と安定動作の両立が可能となるという。同成果の詳細は、2012年2月19日から23日にかけて米国サンフランシスコで開催されている「国際固体素子回路会議(ISSCC 2012:International Solid-State Circuits Conference 2012)」にて、2月21日(米国時間)に発表された。
スマートフォンやタブレット端末に代表されるモバイル情報端末の市場は急拡大をしているが、その中の中枢部品の1つである3Dグラフィックエンジンに求められる性能は日に日に増し、プロセスの微細化や高速化のみでは対応できなくなってきている。こうしたニーズに応えることを目的に同社は今回、グラフィックエンジン内部の複雑な処理を行うステップ間を遅滞なく繋ぐことができる高速バッファを実現するSRAM回路技術の開発を行ったという。
具体的には、高速バッファとして利用される2ポートSRAMには、入力ポートと出力ポートの2つのポートがあるが、主として制御クロック信号は1系統しかないという点に着目。今回の回路技術では、読み出し動作と書き込み動作のタイミングを前後にずらす事で、メモリセルで生じる読み出しと書き込みの干渉作用をなくしたという。
この読み出しと書き込みの干渉作用がなくなったことにより、メモリセルは安定動作が可能となるが、今回の2ポートSRAMでは読み出し動作を先行して行い、安定動作によってもたらされた余裕のあるセル電流特性を用いてデータ線(ビット線)の振幅を短時間に増幅。それと同時に書き込み動作を開始することで、書き込み開始にタイムラグを設けたデメリットを最小限に抑え、ポート間干渉を受ける通常の書き込み時間よりも短期間に、書き込みを完了させることを実現した。
実際に28nm世代のプロセスを用いて、128ワード×64ビットの2ポートSRAMを試作して性能を確認したところ、動作速度(出力アクセス速度)は360psと、業界最高クラスを達成していることが確認されたという。
なお同社では今回開発したSRAM回路技術を今後、28nmプロセスを採用した先端システムLSIに採用して行く予定だとしている。