ソニーは、スマートフォンなどのモバイル機器向けに、350Mbpsの転送速度と高い受信感度を実現し、低消費電力化やセットの部品点数削減・小型化にも貢献する近距離無線通信技術「TransferJet」規格対応LSI「CXD3271GW」を商品化することを発表した。出荷時期は2012年8月を、サンプル価格は500円をそれぞれ予定している。同LSIの成果は、2012年2月19日から23日にかけて米国サンフランシスコで開催されている「国際固体素子回路会議(ISSCC:International Solid-State Circuits Conference)」にて発表された。

ISSCC 2012にてソニーが発表した350Mbpsを超す転送速度を実現したTransferJet規格対応LSI「CXD3271GW」

TransferJet規格に対応したLSIは2009年に同社より商品化されているが、近年のスマートフォンやタブレットなどの普及に伴い、無線通信LSIの低消費電力化と小型化、およびモバイル環境における通信のさらなる高速化や受信性能の向上が求められていた。

今回開発されたCXD3271GWはそうした要望に応えることを目的としたもので、ホストインタフェースとしてSDIO UHS-Iに対応したほか、デバイスドライバなどの新設計により、TransferJet規格の理論上の最高実効速度375Mbpsに迫る350Mbps以上の転送速度を実現した。

また、独自の高速伝送技術と、広帯域RF-CMOS技術により、TransferJet規格値-71dBmを上回る受信感度-82dBm(Rate65受信時)およびRate522受信時-70dBm(規格値-59dBm)を実現、機器間の安定的な通信を可能としている。

さらに従来外付け部品であった、RFバラン、送受信RFスイッチ、LDO、OTP-ROMをLSIに内蔵したほか、マルチリファレンスクロックに対応することで、専用の外付け水晶発振器を不要とし、搭載機器の部品点数や実装面積の削減、および低消費電力化を可能としており、従来モデル比で34%の低消費電力化を実現した。

なお同社では、Android機器への搭載を容易にするために、これまで開発者向けとして提供してきたLinux版ソフトウェアディベロップメントキットに加え、Android版ソフトウェアディベロップメントキットも提供していく予定としている。

CXD3271GWのブロック図とシステム構成例