味の素は、同社が研究を進めているアミノ酸「L-イソロイシン」配合濃厚流動食を、加齢や疾病により通常食を摂取できない糖尿病患者が、長期間摂取(鼻からチューブを通す「経鼻」または胃に穴を開けて直接入れる「胃ろう」にて)することで、糖尿病治療の評価基準である血糖コントロールや栄養改善に効果があることが、医療機関の自主臨床研究で判明したと発表した。

成果は、第27回日本静脈経腸栄養学会(2012年2月23日・24日、神戸国際会議場にて開催)において、5つの医療機関(医療法人静可会 三加茂田中病院、財団法人 信貴山病院ハートランドしぎさん、金沢病院、医療法人 三重愛心会、特定医療法人 葦の会オリブ山病院)から6演題(口頭)が発表される予定。

糖尿病治療の評価指標の1つに血糖コントロールがあるが、その主要な判定は「Hb(ヘモグロビン)A1c」とされ、血糖値はそのHbA1cを補完する指標といわれている。HbA1cは1~2カ月前からの血糖値の結果が繁栄されるもので(画像1)、健常者は4.3~5.8%で、6.5%以上になってくると軽度の糖尿病ともいうべき要注意状態、7%を超えると完全に糖尿病と診断される(10%前後になったら即入院レベル)。

画像1。HbA1cの値の健康状態。6.5%を過ぎたら軽い糖尿病、7.0%を過ぎたら完全な糖尿病

L-イソロイシンは、乳製品、肉類などに多く含まれる必須アミノ酸であり、摂取した糖質が吸収された後に筋肉へ取り込まれることを促進することで、血糖値の上昇を抑制する(低下させる)効果があり、血糖コントロールも期待できる特徴を持つ(光学異性体として、D-イソロイシンがある)。血糖値を長期間にわたって低くコントロールできれば、HbA1cも低くなってくるというわけだ。前述した乳製品や肉類のほか、サプリメントやスポーツ飲料に配合されている「アミノ酸BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)」にも含まれている。

これまで、味の素と日本静脈経腸栄養学会・臨床試験委員会および医療機関との共同研究において、L-イソロイシン配合濃厚流動食が、一般の濃厚流動食と比較して摂取2時間後の血糖値の上昇を有意に抑制する(低下させる)ことは確認されていた。今回は、前述したように5つの医療機関の自主臨床研究における、L-イソロイシン配合濃厚流動食の長期摂取による血糖コントロールの効果についての発表がなされる。

研究成果の1つとして、L-イソロイシン配合濃厚流動食を摂取することで、(1)血糖コントロール指標であるHbA1cが維持・改善し、(2)栄養(「Alb(アルブミン)」は栄養状態を判定する採血検査項目の1つで、3.5g/dL未満は低栄養)状態も改善することが発表される予定だ(画像2)。

画像2。アミノ酸L-イソロイシン配合濃厚流動食の血糖コントロールおよび栄養改善の代表例。L-イソロイシン配合濃厚流動食に変更後、血糖コントロール指標(HbA1c)を6.5未満に維持・改善しつつ(左)、栄養指標(Alb)も平均値で3.5以上に改善(右)

濃厚流動食は加速する高齢化社会の中で、その需要が増加している。また加齢に伴って糖尿病患者も増加し、栄養状態も悪化する傾向だ。同社は、L-イソロイシン配合の濃厚流動食が新しい糖尿病患者の栄養管理の1つの選択肢になることを期待し、今後もさらにアミノ酸研究を進めていくとしている。