サイレックス・テクノロジーは2月15日、都内で会見を開き、2011年のビジネスの状況と、今後の展望の説明を行った。

同社の従来のビジネスの柱はプリントサーバであった。2008年には全売上の63%を占めていたが、構造改革を推進してきた結果、2011年度では28%、2012年度では22%までその比率は低下しており、ワイヤレス関連やUSB関連などのプリントサーバ以外のビジネスが売り上げの約8割を占める状況に変化してきたという。このプリントサーバ以外のビジネスの内訳としては、デバイスサーバ、無線LAN関連、AVネットワークの3種類が主となっている。

サイレックスの売り上げに占めるプリントサーバとその他の製品の比率推移

「(プリントサーバ以外の)新しい製品を3つの種別に分けて、構造改革を進めてきており、現在、その最終盤に来ている」(同社代表執行役社長の河野剛士氏)という。2012年度はその製品構造転換の仕上げの年と同社では位置付けており、クラウド市場の拡大を背景としたデバイスサーバや組み込みソフトウェア群の充実、医療機器やFA・産業機器、ドキュメント関連機器に向けた低消費電力無線LANモジュールの開発と量産体制の構築、無線AVネットワーク関連製品の強化とサイネージ市場でのポジション強化などを推し進めていく計画とする。また、同社は2011年にTOBによる村田機械の子会社となっており、そのシナジー効果による新規事業の創出として、FA機器の無線化なども進めていく計画とする。

現在のサイレックスのビジネスの成長を支える3つの製品分野

次世代のビジネスの柱となる3つの製品群だが、まずデバイスサーバは、国内、米国ともに主要4社のルータベンダに採用されているほか、クラウドサービス向け製品などの搭載も進んでおり、ロイヤリティライセンス本数が増加してきている。すでに2011年で300万本近くまで達し、2012年は欧州や中国での採用数増加が進めば400万本も行ける可能性が出てくるという。

デバイスサーバ分野の概況

ワイヤレスソリューションについては、ドキュメント分野での小型・省電力ワイヤレスソリューションの提供が進んでいるほか、一般の家庭用途と比べて通信環境への要求が厳しい組み込み用途向けアクセスポイント、米国での医療機器ベンダ8~9社への組み込みモジュールの提供およびFA・産業機器への組み込みモジュールの提供が伸びてきており、「2012年1-3月で大きなデザインインなども果たしており、2012年度では前年比で2.5倍程度の台数の増加が見込める」(同)とする。ただし、「台湾ベンダや国内競合無線LANモジュールベンダに比べては1桁出荷台数が少ない」と、市場におけるモジュールのシェアとしては低いことを認めつつも、「テレビ向けや家電向けといった価格競争に巻き込まれるところではなく、医療機器や工業製品など、特殊な場所での用途に特化した取り組みを進めてきており、そうした分野では我々に聞けば、なんでも応えてくれるという風潮ができつつある」とした。

ワイヤレスソリューション分野の概況

そしてAVネットワーキングに関しては、「FPDがあちこちに配置されるようになり、そこにコンテンツを流すという動きが世界的に進んでいる。しかし、そういったFPDに工事を行い配線を接続する手間は多くのカスタマにとってコストの負担になったり、建物に手を入れないといけないが、消防法などの問題でできなかったりと課題が多く、これを無線に置き換えて、手軽に実現できないか、というニーズが発端」とビジネスが始まった背景を説明。現在、Multicast Video Distribution System(MVDS)とNetwork Display Adaptor(NetDA)の2製品を展開しており、すでにMVDSは第3世代品(研究開発レベルでは第5世代扱い。2世代分は商品化されなかったという)まで開発されており、すでに国内の工場やスーパー、病院、放送局、ペンタブレットベンダなどでの採用が進んでいるという。

AVネットワーキング分野の概況

なお、同社は先述の通り2011年に村田機械のグループ会社となっており、今後、生産体制に関しては村田機械の機械加工および電子機器の製造を担当するムラテックメカトロニクス大分工場との生産協業を進め、無線LAN関連製品やUSBデバイスサーバなどの生産を中心に、同工場にて生産を進めることで、2013年には2011年比3倍となる生産規模を確保することを計画しているという。

同社のMVDSシリーズを用いることで、無線LANを活用して、好きなところにデジタルサイネージを配置し、届けたい映像情報を送ることが可能となる。同社が2012年1月に発表したMVDS X-5シリーズはフルHDの画像を遅延なく、複数のデジタルサイネージで再生することが可能だ