メンバーがテーブルを囲んで座り、タブレットやノートPCで事前の資料を見たり、メモを取ったりする……そんな典型的な会議の風景が変わりつつあるようだ。Wall Street Journalが米国のハイテク企業の最新トレンドとして、全員起立での会議が増えていると紹介している(原題:「No More Angling for the Best Seat; More Meetings Are Stand-Up Jobs(よい席を狙う必要はなくなった:増加する起立ミーティング)」)。
記事によると、ベンチャーを中心にハイテク企業の中で起立して会議をするところが増えているという。例えば、米ミシガン州にあるソフトウェア開発企業のAtomic Objectでは毎朝、全員参加・全員起立の会議が開かれているが5分ほどで終わり、その後従業員は仕事を開始するという。
起立の目的は、仕事に関係ない話を控え、簡潔かつ手短に終わらせること。座るとリラックスして話は長くなり、参加者はモバイル端末やPCの画面に見入り始める。すると、気が散るだけではなく、ついつい関係ないメールを書いてしまう――そんな経験がある人もいるだろう。
起立会議自体は新しいものではないが、「ハイテク企業の起立会議ブームはアジャイル開発と関係がある」と同紙はレポートする。アジャイル開発は、顧客のニーズに対し機敏かつ柔軟に応じられるようにプロジェクトを小さな単位に細分割して進める手法で、2001年に「アジャイルソフトウェア開発宣言(Manifesto for Agile Software Development) 」として発表されたアプローチだ。アジャイル開発における起立会議(「デイリースクラム」と言われる)は、メンバーがチームに報告する場と位置づけられており、「昨日のミーティング以降に自分がやった作業」「今日やる予定の作業」「作業を行うにあたっての障害」の3つを伝えるという。
起立会議を行う企業として、ソフトウェアベンダー多く紹介されており、アジャイル開発のメリットを取り込もうという狙いがあるようだ。「起立会議はハイテクカルチャーの一部と言える。ここでは進化のスピードが速く、座席は怠惰の代名詞となる」という。
このトレンドは効率化、時間短縮への追求心の結果と言えるが、慣れてしまうと緊張感もなくなる。そこで、各社は創意工夫しているようだ。
毎日、全員起立で会議を開いているというコンサルティング会社のMountain Goat Softwareでは、開始時間に遅れると「歌を歌う」「罰金を支払う」などの罰を科しているという。また、会議中に話が長くなると警告するなどのルールもあるようだ。オーストラリアのコンサルティング企業では、レゲエ歌手Bob Marleyの「Get Up, Stand Up」などの音楽をかけるようにしている。「音楽がかかると、従業員はすぐに集まる。まるでパブロフの条件反射のようだ」とのこと。さらには、胃袋を利用し、あえて昼食前の12時にきっかり15分、起立会議を行う企業もあるという。これならだれて長くなる心配はなさそうだ。
このごろ会議がマンネリ化していると感じているなら、起立会議を試してみるのもよいかもしれない。